2023/06/29

ヘルスケアの現場から考えるデジタルヘルス(第11回)

世界中で広く展開されているフェムテックとは何か?

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女性の健康課題が注目される理由とフェムテックに求められる役割

(出所:Shutterstock)

フェムテックとは?~フェムテックのはじまり~ 
フェムテック(Femtech)は、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を合わせた造語で、女性の健康とウェルネスに関連する科学技術を指します。1)
日本でフェムテックが認識されるようになったのは2020年頃からですが、フェムテックという言葉は欧米では約10年前から誕生していました。起業家が「アダルトグッズ」「マタニティー製品」「更年期商品」など、各市場にあった技術や製品を集約し、これらがフェムテックであるという括りを持たせることで市場の拡大を図ったと言われています。特に男性にとっては理解の進まない領域において、フェムテックの概念を生み出すことで世界的に認知が広がることとなりました。

世界における女性の健康課題とフェムテックの役割
女性はホルモン量の変動に影響を受け、体に様々な変化が現れます。その変化は短期的な健康問題だけでなく、長期的な社会生活にも及びます。体や健康に関する知識を持ちながら自信の変化に対応できる人は、生活の質や仕事のパフォーマンスを向上することができます。そして、女性固有の病気を予防して、豊かなライフスタイルを形成することもできるのです。女性が自らの健康や社会生活を円滑にコントロールできることが、フェムテックが担う役割なのです。

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女性の健康問題は世界的に深刻です。重要な問題として、性生殖、子宮頸がんや乳がん、メンタルヘルス、更年期の健康、妊娠と出産、食生活や栄養があります。また、健康課題を考える際には、地域や文化によってさまざまな問題や優先事項が存在することに留意する必要があります。宗教、経済の発展度や保険制度、そして気温や公衆衛生の観点でも大きな違いがあるのです。
各国でフェムテックの浸透のスピードは違いますが、単に情報や技術が進むだけでなく、その国の女性にとって本質的な課題解決を図ることが出来るものでなければならないのです。

女性の健康課題においては、教育、啓発、予防、アクセス向上、ジェンダー平等など多くの領域で次なるアプローチが求められており、フェムテックもこれらの健康課題の解決に取り組む必要があります。コロナ危機が落ち着き、各国のフェムテック市場のリーダーが交流を再開している今、世界中の情報や技術を共有しながら、フェムテックが更に盛り上がりを示すことでしょう。

フェムテックの種類と広がり
フェムテックは生理周期、生殖、セクシャルウェルビーイング、妊娠、出産、更年期などの領域に渡り、さまざまな女性の抱える問題を解決するために進化してきました。技術や製品の種類としても、スマートフォンアプリ、ウェアラブルデバイス、センサー、テストキット、バーチャルコンサルテーションに至る多くのテクノロジーの形態があります。

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ここでは一部の主要な領域を紹介します。

  • 生理周期トラッキングと生殖管理: 生理周期や排卵予測をトラッキングし、妊娠を望む女性や妊娠を避けたい女性にとって、最適な時期を特定するためのアプリやデバイスがあります。分泌物を測定することで生理や生殖状態を測るテクノロジーも開発されています。
  • 妊娠と出産: 妊娠中や出産後のケアやサポートを提供するアプリやデバイスがあります。
  • セクシャルウェルビーイングと性教育: セクシャルヘルスの向上や性教育の促進を目的としたアプリやプラットフォームがあります。性的な問題へのアドバイスや、STI(性感染症)の予防や管理に関する情報提供などが含まれます。
  • 更年期の管理: 更年期に関連する症状やホルモンの変化に対するケアをサポートするためのテクノロジーやアプリがあります。ホットフラッシュの追跡や管理、睡眠の改善、ストレス緩和、ホルモン療法のサポートなどが含まれます。
  • 女性の健康管理:女性の健康状態やウェルビーイングのトラッカー、健康リスクの予防、ストレス管理、メンタルヘルスのサポートなどに特化したアプリやデバイスがあります。
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フェムテックへの期待
ヘルスケア以外の業界参入があり、フェムテックは広範囲で成長しています。女性の健康に関連する他の領域でも、更に新しい技術が登場する可能性があり、今後の動向に注目されています。
経済産業省のデータによると、女性特有の月経随伴症状による1年間の労働損失は4911億円 とも言われており、女性の健康課題は社会問題にも発展しています。健康経営が叫ばれる中で、社会や女性自身が健康やウェルネスを積極的に管理できるようになることが求められているのです。2)
フェムテックの進歩により、女性特有の健康上の問題に対するサポート向上が広がることを願います。

(了)


【出典】

1)  経済産業省_フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金事務局 ウェブサイト https://www.femtech-projects.jp/(参照 2023/06/27)
2)  経済産業省ヘルスケア産業課、「健康経営における女性の健康の取り組みについて」、平成31年3月、https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf (参照 2023/06/27)
 

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