2022/08/18

臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術(第22回)

働くひとの健康を世界中に創る、iCARE 【前編】

臨床医, 日本, 医療コミュニケーション支援, 精神疾患

SaaS×専門家の力で企業の健康課題を解決する「Carely」

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健康管理システム「Carely」 (出所:株式会社iCARE)

健康経営に対する取り組みを行う、株式会社iCARE(以下、iCARE)というスタートアップが、「Carely(ケアリィ)」というサービスを提供しています。「Carely」は、働くひとの健康データに基づいた予防措置により、健全な組織づくりを支援する健康管理システムです。

「健康経営」とは
ここで、「健康経営」って何?と思う方もいらっしゃるかもしれません。経済産業省のホームページを見ると、「健康経営とは、従業員等の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と記載があります。高齢化が急速に進む日本において、政府が健康への投資を促進し、「国民の健康寿命の延伸」を実現する取り組みの一つが「健康経営」です。1)

経済産業省は、企業による「健康経営」の取り組みを促進することを目指し、各種顕彰制度を制定しています。2014年度より東京証券取引所と共同で、健康経営に優れた企業に対して「健康経営銘柄」の選定を行っており、本年度は過去最多の50社が選定されました。2) また、2016年度には、特に優良な健康経営を実践している企業に対して「健康経営優良法人認定制度」を創設。本年度の認定数は14,554法人となり、2021年度の9,735法人に対して約1.5倍増となりました。3) 政府は健康経営への取り組みに注力しており、また企業からの関心も高まっていることが伺えます。

米国での健康経営とプレゼンティーズム
米国は医療費水準が高いことで知られており、医療費負担の重さが経営破綻した原因の一つにあげられた企業もあったほどです。しかし実際には、健康関連コストの全体構造で見ると、医療費よりも「プレゼンティーイズム*¹」の方が非常に大きいという研究結果が示されました。4) 「プレゼンティーイズム」とは、メンタルヘルス不調や偏頭痛等の要因で、従業員が職場に出勤はしているものの、何らかの健康問題によって、業務の能率が落ちている状況を指しています。つまり、企業や組織の側から見れば間接的ですが、健康関連のコストが生じている状態です。

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(出所:厚生労働省)

この研究結果が示しているのは、医療費のみならず、プレゼンティーイズム等も含めた全体の健康関連コストの問題を考えていく必要があるということです。そして、企業や組織に働く従業員の健康と生産性の両方を同時にマネジメントしていこう、という発想に基づく「健康経営」の概念が米国では広がりつつあります。5)

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