2022/11/10

メンタルヘルス・精神科医療におけるデジタル技術の活用(第2回)

睡眠におけるアプリやウェアラブルデバイスとの関連 【後編】

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(出所:Shutterstock)

不眠症と治療用アプリ

ヘルスケアへの関心は年々高まりを見せており、その関心と相関するようにアプリケーションの数も増加傾向にあることはご存知の方も多いのではないでしょうか。

治療用としてのアプリケーションの開発も進んでおり、これらはプログラム医療機器もしくはSaMD (Software as a Medical Device) として、一般向けの健康増進を目的としたアプリケーションとは区別して呼称されます。欧米で普及し始め、2022年度より日本でもプログラム医療機器の診療報酬が新設されてから、導入が本格化してきました。治療用アプリケーションは、GCP省令に基づいた治験の実施と医学的エビデンス、厚生労働省による承認を得たもの、とされています。使用は医師の診断と処方を受けた患者さんに限られます。

サスメド株式会社が開発に携わる、不眠症に対するアプリケーションもプログラム医療機器の一つです。1) 不眠症が他の複数疾患へのリスク因子となるにも関わらず、海外では第一の治療選択である認知行動療法の普及が日本では進んでいません。薬物療法に依存せざるを得ない現状を改善するために、認知行動療法としての不眠症治療用アプリケーションが開発されました。治験を実施し主要評価項目の目標を達成後、現在は薬事承認を申請している段階にあります。

治療の選択肢が増えることは、患者さんにとっても治療を提供する医療者にとっても喜ばしいものです。過剰な薬物療法を避けることで、副作用の影響を最小限にとどめることも可能となるでしょう。外来診療において、診察時間を長く取りづらい患者さんへの導入も期待できることと思います。

(出所:Shutterstock)

課題
不眠症に対するプログラム医療機器の開発や普及についての課題としては、まず研究開発費の高騰が挙げられます。日本CRO協会の2021年次業績報告書によると、委託費用の約半分がモニタリングコストを占めています。2) サスメド株式会社では、ブロックチェーン技術を活用して臨床試験にかかるコストの削減や、効率化を目指す取り組みが行われています。

次に、プログラム治療機器の国内における承認のハードルが高いことが挙げられます。イギリスでは、政府機関管轄下の国立医療技術評価機構 (NICE)より、2022年5月に不眠症における治療用アプリケーションの使用が推奨されるようになりました。3) これを機にイギリスにおいてさらに普及が進むことが期待されています。

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