2022/07/21

臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術 (第20回)

データで“調子”をよくする時代へ、テックドクター【前編】

患者データ・疾病リスク分析, ウェアラブル, 診断・検査・予測, 日本, デジタルセラピューティクス, 臨床医

日々のモニタリングデータを医療に活かす

 

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(出所:Shutterstock)

みなさんは、デジタルバイオマーカーという言葉をご存じですか?

「バイオマーカー」と言えば、医学において、何かの疾患や、それらの進行状況などを表すことができるもので、主に心拍数や血圧、心電図、さらには血液中に測定されるタンパク質などの生体由来データのことを指します。その他に、生化学検査、腫瘍マーカーなどの各種臨床検査値や画像診断データなども含まれ*¹、診断、疾病の経過や治療効果の予測、薬剤の作用機序など、幅広い目的で用いられます。
 
バイオマーカーの一種である、「デジタルバイオマーカー」とは、AIやスマートフォン、ウェアラブルデバイス等のデジタルテクノロジーから得られるデータを用いて、病気の有無や治療による変化を客観的に可視化する指標です。デジタル技術により従来のバイオマーカーでは得られなかったデータを取得・解析し、日常診療および医薬品研究開発での活用が期待されています。

Emergen Research社のリサーチによると、世界のデジタルバイオマーカー市場規模は、2020年に10億1309万米ドルでしたが、2028年には144.4億米ドルに達し、年平均成長率は39.2%の収益になると推定されています。この収益成長の後押しとなるのは、スマートフォンやウェアラブルの普及拡大、健康アプリの使用者増加などがあげられており*²、 これらが今後もデジタルバイオマーカー市場の成長に貢献することが予測されます。

株式会社テックドクター(以下、テックドクター)は、大量の長期間データと分析技術によって、疾病の客観的なデータ指標であるデジタルバイオマーカーを開発し、適切な医療提供に繋げることを目指しています。その上で、「データで”調子”を良くする時代へ」をミッションに掲げ、精神科向けウェアラブル外来ソリューション「SelfDoc.」と、医療データ分析基盤「SelfBase」という2つの事業を展開しています。

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(出所:Shutterstock)

「SelfDoc.」
テックドクターのサービスのひとつ、「SelfDoc.」は、独自技術を使って解析・共有することで、データによる見守りを実現するオンラインメンタルヘルスソリューションです。ウェアラブルデバイスから取得されるデータを基にカラダとココロの調子を可視化し、自分の「調子」を上げるためのアクション提案などを行います。

現代はさまざまな変化に対応していく中で、メンタルをどうコントロールしていくかが大切になっています。「SelfDoc.」は、自分のコンディションを知るうえで重要な4つの要素、気持ち・心拍・睡眠・運動などから、その日の身体と心の状態を数値化します。さらに、週単位、月単位での可視化も可能であり、メンタルの揺らぎがどういう時に起こるのかを把握することができます。

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(出所:テックドクター)

「SelfDoc.」のサービスは、主に企業での産業保健分野で行っていました。このサービスを医療機関にも提供し、これまで医師が正確に把握しにくかった患者さんの運動や睡眠に関する客観データを患者・医師間で共有することで、医師から患者さんへのより良いアドバイスや、患者さんの安心感・満足度向上につながるかどうかを検証するため、2021年7月より、千葉県船橋市のクリニックにて実証テストを開始しました。

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