2022/03/10

ヘルスケアの現場から考えるデジタルヘルス(第4回)

世界初の言語系AI医療機器の開発を目指すFRONTEO

医療機器, 医療コミュニケーション支援, 診断・検査・予測, 言語技術, 行政・規制ニュース, AI技術, FRONTEO, 認知症

会話型認知症診断支援AIプログラムで日常会話から認知症診断への期待

(出所:Shutterstock)

厚生労働省によると、日本における65歳以上の認知症患者数は2025年には約700万人になると予測されていることをご存じでしょうか?これは、高齢者の約5人に1人が認知症患者ということになります。認知症は、バイオマーカー不足のため専門的な知識や経験が必要であり、診断が難しいといわれる病気の一つです。しかし、FRONTEO社の開発しているAI医療機器によって認知症の診断が劇的に簡単になるかもしれません。自然言語を用いたAI医療機器によって、医師と患者が10分ほど会話することで、認知症のスクリーニングが期待されます。今回は、日本から世界初の言語系AI医療機器開発を目指す、FRONTEO社の戦略的プログラムについて解説します。

認知症について
認知症は、脳の病気や障害などさまざまな原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる病気です。認知症の診断は医師による面談、神経心理学的検査、画像診断などから判断されます。また専門医でないと、認知症の診断が難しいといわれています。診断に時間がかかることで医師、患者の負担になっていることが課題です。

会話型認知症診断支援AIプログラムについて
FRONTEO社は自社のAIエンジン「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」を利用し、AI医療機器の開発を進めています。自然言語を用いたAIプログラムによって医師と患者間の10分程度の日常会話から認知機能障害をスクリーニングできるのではないかと期待されているのです。

FRONTEO 会話型認知症診断支援AIプログラム
(出所:株式会社FRONTEO)

Concept Encoderについて
Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)とは、ライフサイエンス領域を対象として開発された自然言語に特化した人工知能(AI)です。ライフサイエンス関連のビッグデータをエビデンスに基づいて有効に解析・活用することを目標に開発されました。ライフサイエンス研究やヘルスケア従事者の共通認識である「エビデンスに基づいた医療(EBM)」に欠かせない有意差検定などの統計学的手法を自然言語解析に導入・実現しています。また、テキスト以外のデータとの共解析も可能です。ライフサイエンス領域に蓄積されてきた遺伝子発現情報・バイタルや各種検査値などの「数値データ」との共解析の研究と開発を進めています。

認知症における医療現場でのAIプログラム
医療現場でAIプログラムを使用するためには、医薬品医療機器総合機構(PMDA)*¹ との相談のもと、臨床試験(治験)をおこなう必要があります。治験ではAIプログラムによる判定と普段の診断方法を比べて、差があるかどうか確認します。このAIプログラムの使用は、非常に簡単な方法です。医師や心理士と患者が普段の診察でされる通常の会話をAIで解析するだけで、医師の診断をサポートします。
一方、現在の認知症の診断方法の1つである神経心理学的検査は、専門知識を持つ医師でなければ判定ができません。評価する医師によって結果に差もあります。また検査に時間もかかります。そのため、患者だけでなく医師にも負担になっているのです。負担がかかる課題に対して、AIプログラムで医師の診断支援ができるか治験の結果が注目されています。

臨床開発の担当者の視点での本プログラムについて
FRONTEO社が治験を行うまでの道のりは、非常に険しく苦労が絶えなかったものだと想定されます。

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