2023/05/23

米国eHealthジャーナル第88号

Butterfly NetworkのAuto B-line Counter、FDAの承認を獲得

行政・規制ニュース, Butterfly Network, ジャーナル第88号, AI技術, 画像技術

B-ラインの自動カウントで医師の情報に基づく治療決定を支援

iPhoneを利用した超音波検査システムの開発で知られるButterfly Network(以下、Butterfly)は4月3日、人工知能(AI)を搭載した同社の肺超音波イメージングシステム「Auto B-line Counter」が510(k)経路でFDAの承認を獲得したと発表した。Auto B-line Counterは、肺炎などを起こした肺の超音波検査で見られるB-ラインを自動カウントするもの。正常な肺では多量の空気が含まれるが、肺水腫や肺炎などを罹患し肺が水分や細胞成分で満たされると、胸部エコーにおいて胸膜ラインから深部に向かって高エコー性(超音波検査で白く映るものを指す)の明るい垂直のラインが生じる。これはB-ラインと呼ばれ、肺の湿り気を示しており、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、新型コロナ感染症(COVID-19)などの肺気孔疾患と関連する。

Auto B-line Counterは、肺機能低下が疑われる成人の評価方法を簡素化し、医師が臨床現場で情報に基づく治療決定を迅速に行うのを支援する。B-ラインは従来、マニュアルベースでカウントされていたが、ディープラーニング技術を活用することで、わずか6秒間の超音波クリップからBラインカウントを生成することが可能になるという。Auto B-line Counterの利用によりカウントプロセスを変容させることができるだけでなく、B-ラインの解釈をより一貫したものにできる。

「Butterflyの目標は、医療従事者、そして最終的には消費者に、フルカラーで注釈付きの“人体への窓”をリアルタイムで提供することだ。AIを活用し超音波検査を容易なものにすることがButterflyの中核であり、専門分野を問わず、より多くの臨床医による超音波検査を可能し、彼らが情報に基づくモニタリング、臨床評価、治療法の選択を行うのを支援する」と、Butterfly Networkの創設者で暫定CEOのJonathan Rothberg博士は述べた。

Butterflyでは、Auto B-line Counterの米国での販売を2023年初夏に予定している。

コネチカット州ギルフォードを拠点に2011年に設立されたButterflyは、iPhoneを利用して全身のイメージングが可能な世界初の手持ち式超音波診断デバイスシステム「Butterfly iQ」の開発に成功した。伝統的なイメージング機械と比較してほんのわずかなコストで、世界中で利用することが出来る。Butterfly iQは、腹部、心臓、泌尿器の検査、婦人科や胎児に対する検査など10種類以上の用途でFDA承認を受けている。


出典:Butterfly

Butterflyは2020年11月には、ヘッジファンドのGlenview Capital Management傘下の特別買収目的会社(SPAC)であるLongview Acquisitionと合併することで合意。取引完了によりニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。NYSEでの銘柄コードはBFLY。

一部報道によると、「Auto B-line Counter」のFDA承認を受けてButterflyの株価は22%の急上昇を見せたが、2020年の上場時の価格である10.12ドルと比べると、現在は約2ドル台で推移しており、低い水準にある。同社は2022年、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団から500万ドルの助成金を受け、サハラ以南のアフリカで同社のイメージング技術へのアクセスを拡大した。

(了)


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