2023/04/28

デジタルテクノロジーによって進化する歯科治療(第14回)

NTTデータ経営研究所に聞く「ICTを活用した医科歯科連携等の検証事業」 【後編】

AI技術, 臨床医, テレヘルス, 診断・検査・予測, 日本, 歯科・口腔外科

(出所:Shutterstock)

歯科オンライン診療・医科歯科連携で求められるテクノロジーとは

今、オンライン診療の取り組みが進んでいます。それを支えているのがICT(情報通信技術:Information and Communication Technology)の発展です。内閣府は「経済財政運営と改革の基本方針 2022 (骨太方針2022)」で、医療・介護分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を図るため、オンライン診療の活用を促進すると発表しています。1)

アメリカではメディケア(公的保険制度)を用いて、オンライン診療を含む遠隔医療を利用した人は、コロナ禍が始まる前である2019年3月から1年間の約91万人から、2020年3月からの1年間に約2825万人まで急増しました。2)  遠隔医療の市場は2022年に350億ドルを超え、今後10年間、年平均成長率12.5%で進展する予測があります。3)

日本でオンライン診療が進む背景には、コロナ禍で医療機関の受診が難しい状況や「医師の働き方改革推進」による医師の勤務環境改善、医師の偏在の問題もあります。安全で適切なオンライン診療を推進するため、厚生労働省は平成30年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を通知しました。4) オンライン診療は医療と経済、テクノロジーの観点から注目されているのです。

このように医科でのオンライン診療の検討が進むなか、歯科分野での検証が始まりました。株式会社NTTデータ経営研究所(以下、NTTデータ経営研究所)は「ICTを活用した医科歯科連携等の検証事業」を厚生労働省から受託し、全体統括を行っています。5) 同社は、企業経営から事業戦略、金融、ITやデジタルイノベーション、グローバルサービスのほか、医療ヘルスケアや介護の分野にもコンサルティングの実績があります。 

(出所:株式会社NTTデータ経営研究所)

中編に続き、NTTデータ経営研究所ライフバリュークリエイションユニットのアソシエイトパートナーの朝長大氏と、マネージャーの塙由布子氏にお話を伺いました。

Q8. 株式会社NTTデータの100%子会社として設立されたコンサルティングファームとして、近年のオンライン診療など、医療全般におけるICT化やデジタルヘルスの動きについてどう思われますか?
朝長氏:ICT化やデジタルヘルスが医療・介護現場の負担軽減や質の向上、ひいては患者・利用者のためになるのであれば推進していくべきと考えます。しかし、中途半端なICT化やデジタル化は、現場に負担をかけ、使われないシステムが負の遺産として残ってしまう事ことになります。現場で容易に使え、診療や介護の運用に耐えうる仕組みの導入が必要であると感じています。

Q9. 今回は2年目とのことですが、「ICTを活用した医科歯科連携等の検証事業」は継続していくのでしょうか。また今後、この事業は社会やこの領域にどのような役割を果たしていくことを考えておられますか?
塙氏:「ICTを活用した医科歯科連携等の検証事業」は次年度も実施される予定です。さまざまな検証を行い、社会実装に向けた普及啓発を行います。歯科専門職と医科や介護施設職員等が連携し、ICTを活用することで限られた医療・介護資源の有効活用、患者・利用者のQOLの維持・改善に繋げるような役割を果たしていくことを目指しています。

Q10. 「ICTを活用した医科歯科連携等の検証事業」では今後、海外の事例なども検討するご予定はありますか?
塙氏:特に海外の事例調査を実施する事は考えておりません。もし実施するとしたら、過去にEHR/PHR(Electronic Health Record/Personal Health Record)やデータの利活用について海外調査を実施した際と同様に、デスクトップ調査、ヒアリング調査を行うことになると思います。
    
Q11. 医療ICTの領域がどのように進展し、また他の領域に影響していくとお考えですか?

(次ページへ)


本記事に掲載されている情報は、一般に公開されている情報をもとに各執筆者が作成したものです。これらの情報に基づいてなされた判断により生じたいかなる損害・不利益についても、当社は一切の責任を負いません。記事、写真、図表などの無断転載を禁じます。
Copyright © 2023 LSMIP事務局 / CM Plus Corporation

連載記事

執筆者について

関連記事