2023/02/09

デジタルテクノロジーによって進化する歯科治療(第11回)

歯科系スタートアップ スクリエ社に聞く ―事業展望について

臨床医, テレヘルス, 歯科・口腔外科, 日本, 診断・検査・予測, AI技術

(出所:Shutterstock)

Healthtech/SUM 2022ピッチコンテストから【後編】

株式会社スクリエ(以下、スクリエ社)は京都大学に本社を構える歯科系のスタートアップ企業です。ユーザーがスマートフォンを用いて自分で口腔内の写真を撮影できる「HAKKENミラー」の特許を取得し、販売を予定しています。前半では、2022年12月1、2日に開催されたHealthtech/SUM 2022で、ヘルステックに取り組むスタートアップ企業のファイナリスト8社として選ばれたスクリエ社の事業について伺いました。後半ではスクリエ社の代表である歯科医師の岡本孝博氏に、事業の展望やオンライン歯科診療に対する見解についてさらに詳しく尋ねます。

代表取締役社長 CEO/歯科医師/デンタルデザイナー 岡本孝博先生
(出所:株式会社スクリエ)

Q. HAKKENミラーのビジネスの状況を教えてください。

岡本先生:HAKKENミラーは2022年12月の販売開始を予定して進めてきました。オンライン歯科サービスについてはアプリやシステムの社内テスト中で、2023年前半のリリースを目指しています。 つながりのある歯科医師ネットワークで立ち上げ、サービス拡大後にネットワーク外の歯科医師にも展開していく予定です。 また、歯科医院を対象にしたシステムを開発中で、2023年3月の販売開始を目指しています。また、歯科の受診が容易ではない地域の方にも使って頂くことを目指しています。 

Q. 御社のキャッシュポイントはどこにありますか?

岡本先生:HAKKENミラーの販売、歯科医師からのプラットフォーム利用料、歯科医院の月額課金などです。

Q. Healthtech/SUM 2022でもオンライン診療が話題になりましたが、歯科のオンライン診療への動きについてどう考えられますか? 

岡本先生:前述と重複しますが、歯科は口の中が見えないと何も言えないので、コロナ禍においてもオンライン化が進んでいません。前歯を外からみる写真だけでも、矯正の進行チェックなどある程度の判断は可能ですが、虫歯等の診断をするためには、歯の噛み合わせる面(咬合面)の情報が奥歯まで必要です。「HAKKENミラー」を使えば自宅などで奥歯の画像が撮影でき、より高度なアドバイスが受けられる可能性があります。

口腔内専用の小型カメラの開発も進められていますが、高価なため患者さんが持つことは非現実的でした。HAKKENミラーは患者が持っているスマートフォンのカメラを使用することで比較的に安価のため、歯科のオンライン診療も進むと想定しています。

現在のオンライン診療は医科(特に内科)を想定してガイドラインが作られており、患者さんとの会話を重視しています。歯科のオンライン化には歯科特有のガイドラインが必要になると考えています。

(出所:株式会社SQRIE)

Q. 海外での展開は考えていますか? 

岡本先生:海外販売を見据え、HAKKENミラーの特許のPCT出願(Patent Cooperation Treaty:特許協力条約に基づく国際出願)をしています。移行国は現在検討中ですが、歯科治療が高額なアメリカやシンガポールを軸に考えています。 また、歯科医院向けシステムの海外展開、画像歯科健診AI開発後にはオンライン歯科サービスの海外展開も考えています。

Q. 近年、進歩が見られるヘルステック業界の展望をどう思われますか?

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