2023/01/24

米国eHealthジャーナル第81号

Patient Square CapitalがEargoの親会社に

ジャーナル第81号, Eargo, ウェアラブル, 医療機器, 聴覚障害, 行政・規制ニュース, VC投資・M&A・決算

FDAの新規OTC補聴器規制を背景に患者アクセスが増大

カリフォルニア州サンノゼ拠点の補聴器メーカーEargoは11月29日、 ヘルスケア投資会社のPatient Square Capital(以下、Patient Square)がEargoの親会社となったことを明らかにした。Patient Squareは現在、Eargoの発行済み株式の76.3%にあたる3億1,640万株を保有している。Eargoは2020年10月に新規株式公開(IPO)を実施し、ナスダック・グローバル・セレクトマーケットへの上場を果たしているが、Patient Squareによる株式の過半数取得後も上場は維持される。

Eargoは消費者直販(DTC)で補聴器を販売している。Amazon.comでの現在の販売価格は1,450ドル~2,950ドルで、高価格帯の製品には聴覚専門家によるテレヘルスを介した遠隔サポートが生涯にわたって提供されるサービスが含まれている。Eargoの全ての補聴器は充電が可能で、使用の際に目立たないデザインとなっている。ユーザーは、コンパニオンアプリを利用してオーディオのセッティングを行うことが可能で、例えばTPOに合わせてセッティングを変えたり、自身の好みに合わせて低音や高音の調整を行うことが出来る。Eargoはまた、聴覚スクリーニングやテレヘルスによるコンサルテーション、カスタマーサービスをオンラインで提供している。


出典:Eargo

Eargoの社長兼CEOであるChristian Gormsen氏は、「へルスケア業界で最も評価の高い投資会社の1つであるPatient Square によるEargoの所有および支援は、Eargoの技術、ミッション、成長戦略に対する彼らの信頼とEargoの長期的成長に向けたコミットメントを示すものだ」と述べた。Patient Squareのマネージングディレクター、Justin Sabet-Peyman氏は「Eargoが擁する新規技術とテレヘルス・インフラ、確立されたDTCビジネスに加えて、特に、処方箋を必要としないOTC補聴器の新規規則によって患者アクセスが増加し、バランスシートが改善された今、Eargoは将来の成長に向けて有利な立場にある」と、声明で述べた。

米国では補聴器が1セット平均5,000ドル以上と高額であるうえ、しばしば保険償還の対象外でもあることから、全米で約4,800万人の難聴患者の14%程度しか補聴器を使用できていないという問題がある。補聴器市場は大手メーカー4社が市場の84%を占有しており、専門医経由でしか補聴器を購入できないことが新規参入の障壁となっていた。連邦議会は2017年に補聴器のOTC購入を実現する法を成立させたものの、実施に必要な規定が発表されないまま数年が経過し、これを問題としたジョー・バイデン大統領は2021年7月、専門医を介さず補聴器をOTCで購入可能にするための規定案を120日以内に策定することを保健福祉省(HHS)に求めた。そしてついに、FDAが新たに設定したOTC補聴器の規制カテゴリーが10月に実効化された。OTC補聴器は、処方箋のほか医師の診察、フィッティング調整も必要としない。

(了)


本記事掲載の情報は、公開情報を基に各著者が編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対してはいかなる責任も負いません。また掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
Copyright © 2023 株式会社シーエムプラス LSMIP編集部

連載記事

執筆者について

関連記事