2022/12/27

米国eHealthジャーナル第79号

聴覚技術企業Yes Hearing、シリーズA資金調達ラウンドで1,000万ドルを調達

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新規DTC事業の成長と規模拡大を目指す

聴覚技術企業のYes Hearingは11月4日、シリーズA資金調達ラウンドで1,000万ドルを調達したことを明らかにした。 Blue Heron Capitalが主導した同ラウンドには、Primetime Partners、Ensemble Innovation Ventures、Maccabee Ventures & Gaingelsも参加した。Yes Hearingは、聴覚障害者向けのオンラインプラットフォームとテレヘルスによる在宅ケアを提供している。ユーザーは、同社と提携関係にある補聴器メーカーの処方箋補聴器を、クリニックで買うよりも最大で40%安価に取得することが出来る。

2019年設立のスタートアップ企業であるYes Hearingは、聴覚ケアのアクセスを改善することで、健康かつ安全に、高齢者が住み慣れた街で年を重ねることを意味する「aging-in-place」を支援することをミッションとしている。手頃な価格で最先端の補聴器と補聴器技術を提供するとともに、500名以上の聴覚士と聴覚ケア専門家で構成される、世界最大の聴覚専門家モバイルネットワークを介して、テレヘルス聴覚サービスを提供している。


出典:Yes Hearing

今回調達した資金を活用してYes Hearingは、独自の在宅ケア技術プラットフォームの開発を加速させるとともに、処方箋を必要とせず薬局カウンターで直接購入できるOTC補聴器を含む新規の消費者直販(DTC)事業の成長と規模拡大に努める。

米国では補聴器が1セット平均5,000ドル以上と高額であるうえ、しばしば保険償還の対象外でもあることから、全米約4,800万人の難聴患者の14%程度しか補聴器を使用できていないという問題がある。補聴器市場は大手メーカー4社が市場の84%を占有しており、専門医経由でしか補聴器を購入できないことが新規参入の障壁となっていた。連邦議会は2017年に補聴器のOTC購入を実現する法を成立させたものの、実施に必要な規定が発表されないまま数年が経過し、これを問題としたジョー・バイデン大統領は2021年7月、専門医を介さず補聴器をOTCで購入可能にするための規定案を120日以内に策定することを保健福祉省(HHS)に求めた。そしてついに、FDAが新たに設定したOTC補聴器の規制カテゴリーが10月に実効化された。OTC補聴器は、処方箋のほか医師の診察、フィッティング調整も必要としない。
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-finalizes-historic-rule-enabling-access-over-counter-hearing-aids-millions-americans

「FDAが店頭での小売り販売を許可したことは、補聴器の認知度とアクセスにとって素晴らしいことだ。より多くの人々が補聴器を入手できることは非常に喜ばしいが、聴覚ケアはそれだけにとどまらない。Yes Hearingでは、補聴器の実際の使用率を上げるために必要な知識とカウンセリングを提供する、テレヘルスサービスを提供している。これは、コミュニケーション、機動性、認知症予防などの面で、聴覚障害を超えた長期的な健康につながる」とYes Hearingの創設者兼CEOのSam Shear氏は話す。同氏は聴覚ケアを、健康に年を重ねるにあたって必須の要素と位置付けている。、「難聴の問題を抱える個人は、社会において孤立したりライフスタイルも粗末にしがちで、その結果として、生活の質に悪影響を与える合併症のリスクを高めてしまう。周囲の世界と繋がり、コミュニケーションする能力を失うことは、本人にとっても、周囲の人々にとっても、大きな影響を与えることになる」と同氏は述べた。

出典:Shutterstock

(了)


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