2019/07/23

米国eHealthジャーナル試読版

MyHeritage、新規DTC遺伝子検査キットを発売

行政・規制ニュース, 診断・検査・予測, 23andMe

祖先のルーツと疾病に関連する遺伝子変異を消費者に報告

消費者直販(Direct to Consumer、DTC)の遺伝子検査キットを販売するMyHeritageは5月20日、BRCA遺伝子変異を含む11種類の疾病の遺伝子リスクを検出する新しい遺伝子検査キット「MyHeritage DNA Health+Ancestry」を販売すると発表した。

イスラエル拠点のMyHeritageは、遺伝子検査キットの販売でグローバル展開を行っており、米国では2016年から祖先のルーツを探る遺伝子検査キットを販売している。様々な項目をカバーする日本のDTC遺伝子検査とは異なり、米国では祖先のルーツを探る検査が主流である。そういった遺伝子検査キットは、基本的には母親のハプログループ(ミトコンドリア・ハプログループ)と父親のハプログループ(Y 染色体ハプログループ)の情報を提供しているのみで、検査の価格は100 ドル前後である。

祖先のルーツに関する関心が高いのは米国が移民国家であるためだ。 ヨーロッパ、アフリカ、アジアなどのさまざまな人種から成り立っていて、混血もかなり多い。しかし、戸籍制度がないために先祖を知ることが難しく、曾祖父母より以前の世代になると、どこから来たのか、どんな人と結婚したのかなど、わからない場合が多い。

AncestryDNA、23andMe、MyHeritageDNA、Family Tree DNA、Living DNAのDTC遺伝子検査キット大手5社のうち、疾病関連の遺伝子リスクを検出するDTCテストを手掛けるのはこれまで23andMeのみだった。「MyHeritage DNA Health+Ancestry」は具体的には、11種類の疾病の遺伝子リスク、3種類のポリジーン・リスク、15種類の原因遺伝子保因者(キャリア)検査を行うもの。その内容は、23andMeが提供する遺伝子検査キットの「Personal Genome Service」と似通っている。

なお23andMeは、同社のキットに含まれるいくつかの診断項目についてFDAの承認を獲得しているが、MyHeritageは、新しく販売されるサービスはそれ単独で疾病の診断や予防を行うものではなく、またユーザーの現在の健康状態について情報を提供するものではない、としてFDA承認は取得せずに販売する計画である。


MyHeritage

DTC遺伝子検査キットの規制環境の紆余曲折
DTC遺伝子検査キットのうち、祖先のルーツを探る目的で利用されているものなど、「診断」にあたる行為を行っていないものについては、FDA の管轄外となっている。

つまり遺伝子検査の結果に基づいて、サプリメントやダイエット、スキンケアなどに関して推奨情報を提供するサービスも、「診断」にはあたらないためFDAの管轄外となる。サプリメントやスキンケアに対するアドバイスの提供については、特に定められた資格等は存在しないため、誰でも他人に対してアドバイスを提供することが可能となっている。

「診断」を行うテストであってもFDA承認を必要としない場合がある。LDTと呼ばれる体外診断テストは、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)の管轄とされ、「CLIA認可ラボ」に登録されたラボであれば、FDAの承認なしでLDTの商業化が可能だ(試読号版第2号(2019年7月発行)記事「DTC診断テスト企業のLetsGetChecked、3,000万ドルを調達」を参照)

MyHeritageによると、「MyHeritage DNA Health+Ancestry」もLDTであり、CLIA認可ラボで開発され、そこで解析が実施されている。なお、DTC遺伝子検査キット大手企業のほとんどは、「診断」を行わないテストについても、CLIA認可ラボで解析が実施されていると報告している。

FDAは2010年、DTC遺伝子検査のうち、疾患に関連する遺伝子変異を検出して疾患発症リスクを報告するものや、単一遺伝子疾患の原因遺伝子の保有を判定するものについては医療機器に分類され、したがってFDAの規制対象であるとの見解を示し、23andMeのほか、Pathway GenomicsやKnome、Navigenics、現在は Amgenの子会社であるdeCODE Geneticsなど、当時FDAの許可なく、こういった遺伝子検査キットを販売していた一連の企業に警告書を送付した*1 。しかしながら、複数の企業が FDA の警告を無視して検査の販売を継続した。

deCODEやKnome、Navigenicsは、他社に買収されたことで検査の販売にピリオドを打ったが、唯一23andMeは、2013年11月に検査販売の即時停止警告をFDAから受領するまで販売を続けていた*2

その後の23andMeは、多数のユーザーのゲノム情報を含む同社のデータベースを活用して、製薬企業による新薬開発に役立てるビジネスへと事業転換を図り、GenentechやPfizerなどと提携。その一方でFDAとも交渉を続け、2015年2月にブルーム症候群の原因遺伝子キャリア検査を目的とするDTC遺伝子検査について FDAから承認を獲得した。

同テストの審査は、安全性のリスクが低~中程度で、実質的に同等な製品が存在しない革新的医療機器に対する承認経路であるデノボ(de novo)に基づき行われた。その後FDAは2017年4月、10種類の疾患の遺伝子リスクを検出する23andMeの「Personal Genome Service」について、デノボ承認経路により販売許可を与え、さらに、安全性リスクが同社の承認済みDTC遺伝子検査と同じクラスIIに分類される23andMeのテストサービスについては、今後審査を免除(class II exemption)することを決定、検査診断項目の増加に道を開いた。 

FDAは2017年11月、疾患の遺伝子リスクを検出するDTC遺伝子検査について、特定の条件を満たした場合に510(k)申請を免除することを提案し、これまでのスタンスから大きく方向を転換した。

このガイダンスは最終化され、2018年6月5日付連邦官報*3 において、少なくとも1件の遺伝子検査について、その販売前にFDAから1回限りの審査(one-time review)を受け、クリアした企業については、それ以降に販売する同様の遺伝子検査について審査が免除されることが発表された。

(了)


*1) https://www.nytimes.com/2010/06/12/health/12genome.html
*2) https://blog.23andme.com/news/23andme-statement-regarding-fda-warning-letter/
*3) https://www.federalregister.gov/documents/2018/06/05/2018-11879/medical-devices-exemptions-from-premarket-notification-class-ii-devices


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第73号 (2022年09月27日発行)

日本で医療用医薬品ネット販売を検討中と一部報道で囁かれているAmazonだが、米国ではプライマリケアプログラム「Amazon Care」向けの買収や提携を積極的に強化し、ポストコロナのハイブリッド型ケアの将来を模索している。また、公的保険制度のメディケアでは、保険償還の対象となった遠隔患者モニタリング(RPM)の利用拡大傾向が調査で明らかとなった。スタートアップ各社では、レイオフのニュースが相次いだ一方、第2四半期の決算発表を通じて、各社の次の展開が少しずつ見えてきた。

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