2023/05/09

米国eHealthジャーナル第87号

デジタル・セラピューティクス企業のPear Therapeuticsが身売りを検討

Pear Therapeutics, デジタルセラピューティクス, VC投資・M&A・決算, 提携, ジャーナル第87号

財務アドバイザーにMTS Health Partners を起用

処方箋デジタル・セラピューティクス(DTx)の開発に特化するPear Therapeutics(以下、Pear)は3月17 日、株主価値を最大化するための戦略的代替案を検討するプロセスを開始したと発表した。Pearは、ヘルスケア業界に戦略的・財務的アドバイスを提供する大手ブティック投資銀行の MTS Health Partners を財務アドバイザーとして起用した。

Pearは2021年6月に特別買収目的会社(SPAC)であるThimble Point Acquisition Corpと合併することで合意し、同年12月の取引完了を経てナスダック(NASDAQ)上場を果たした。同社は、DTxのパイオニア企業として知られ、物質使用障害(SUD)患者の治療を適応として2017年9月にFDA承認を獲得した「reSET」、オピオイド使用障害(OUD)患者による外来治療プログラム継続率の向上を目的に2018年12月にFDA承認を受けた「reSET-O」、慢性不眠症患者の治療を適応に2020年3月にFDA承認を受けた「Somryst」の3種類の処方箋DTxを販売している。また、2021年11月には、アルコール使用障害(AUD)を適応症として開発中の処方箋DTx候補、「reSET-A」について、FDAから画期的医療機器指定を獲得した。


出典:Pear


出典:Pear

Pearによると、全米では4,000万人以上がなんらかの依存症と闘っている。しかしながら、reSETやreSET-Oを必要とする患者のうち、治療を受けているのはその10~20%に過ぎない。Pearではこういった患者にリーチするために、マーケットアクセス戦略を展開し、主に各州のメディケイドプログラムを通じて同社の処方箋DTxの患者アクセスを大幅に拡大させてきた。直近では、2023年1月に、reSETとreSET-Oがフロリダ州メディケイドプログラムの優先医薬品リストに追加されたことを明らかにしている。しかしながら、市況の冷え込みを受けてデジタルヘルス業界で多くのレイオフが行われる中、Pearも2022年7月に証券取引委員会(SEC)に提出した資料において、フルタイム従業員の約9%にあたる約25名をレイオフすることを明らかにしている。Pearは、このレイオフによって向こう18カ月に渡り約2,800万ドルの営業経費を削減できるとしていた。その後にPearはさらなるレイオフを承認し、2022年9月末時点で従業員の約22%に当たる59人が影響を受けた。

Pearによると、戦略的代替案の検討プロセスの一環として同社は、事業売却、合併、資産分割、ライセンス供与、その他の戦略的取引の可能性を検討し、追加ファイナンシングの可能性も合わせて追求する。このプロセスには定まった期限はなく、Pearが取引を行うこと、または取引を行ったとしても同社にとって魅力的な条件で取引が完了することを保証するものではないという。何らの取引にも至らなかった場合には、組織再編、清算もしくはその他のリストラクチャリングの実施が必要になる可能性がある。Pearによると、同社の取締役会が確定的な行動方針について承認するか、または開示が必要もしくは適切であると判断するまで、このプロセスの進展について開示またはアップデートを提供することはないという。

(了)


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