2023/04/20

臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術 (第29回)

やさしさでつながる社会をつくる、cotree 【後編】

精神疾患, デジタルセラピューティクス, 日本, 臨床医

株式会社cotree 代表取締役 西岡 恵子氏
(出所:株式会社cotree)

cotreeが直面する課題と描く未来

前編では、株式会社cotree(以下、cotree)が提供している、オンラインカウンセリング「cotree」のサービス内容について紹介いたしました。後編では、cotree代表取締役、西岡恵子氏へのインタビュー内容をご紹介いたします。

Q1. 企業での法整備や学校での対応の必要性が増え、ようやくプレゼンティーズム(欠勤には至っていないが、健康問題が理由で労働生産性が低下している状態。)*1 への認識が高まっています。カウンセリングを受ける人の側も、意識の変化を感じますが、2014年創業時から見て、cotreeの変わったことや、変えないことは何でしょうか?

西岡氏 『創業当時は「カウンセリング」をオンラインで実施することに対して、心理業界のなかでも抵抗感を感じることもありましたが、コロナウイルス流行の影響や、オンラインカウンセリングを一緒に実現してくださっているカウンセラーの方々の活動のおかげもあり、「対面」での心理支援以外の方法が、現在ではとてもポピュラーなものになりました。そういった心理業界での受け止め方の変化に伴って、cotreeで働きたいと応募をしてくださる心理職の方々も大きく増えました。

創業初期はビデオ通話を用いた「話すカウンセリング」のみを提供していましたが、さまざまな専門性を持つ心理職の方々がcotreeに参加してくださるなかで、「書くカウンセリング」「アセスメントコーチング」「カップルカウンセリング」「キャリアカウンセリングプログラム」等、それぞれの専門家の専門性を活かした、多様な価値提供が行えるようになりました。

「書くカウンセリング」(出所:株式会社cotree)

また、今までは個人を支えることを軸にサービスを展開してきましたが、現在は企業や自治体や大学などへ向けた心理支援の提供にも注力しています。健康経営に取り組む法人が増え、それに伴って従業員のメンタルヘルスに着目する企業も多くなりました。そういった背景を受けて、企業や教育機関などを対象とした法人向けプランを展開し、現在までに対象者5万人以上の方にプランを提供しています。

創業当時より「やさしさでつながる社会をつくる」というミッションのもと、心のケアを社会に浸透させ当たり前のものにしていくために、様々な試みを続けてきました。今までもそしてこれからも、このミッションのもと活動を続けていきます。そのなかで、cotreeでできることだけにこだわらず、業界全体の横のつながりも大切にしながら、cotreeが社会のハブとなり、積極的に実証実験や外部連携など進めていき、「やさしさでつながる社会」の輪を広げていきたいと考えています。』

(出所:株式会社cotree)

Q2. 御社でのエンジニアの人材募集において「システムに落とし込むことができる、コミュニケーションがしっかり取れる人を探している」とありました。cotreeの目指すものを、エンジニアとどういったすり合わせを行い、実装と実践ユーザーからのフィードバックループを回しているのでしょうか?

西岡氏 『cotreeではスクラム開発を基本としています。1週間程度の短いスパンでスプリントを定めており、常に、カウンセリングをご利用いただくユーザー、カウンセラーとしてご利用いただくパートナー双方の利便性や継続した利用の促進を目指して開発を進めています。

開発チームにはエンジニアだけでなく、ユーザーやカウンセラーへのカスタマーサポート経験のあるものや、心理支援への学術的な知識のあるものが配属されており、開発から実装後にかけて細かくレビューを実施しています。

カウンセリングを受ける側/する側の双方から見たときに、実装予定の(または実装した)機能やプロダクトが心理的負担を増やしていないか、ユーザーの求める心のケアと乖離していないかなどを細かく点検しつつ、開発を前進させています。』

株式会社cotree 代表取締役 西岡 恵子氏
(出所:株式会社cotree)

Q3. 創業者の櫻本氏のインタビューにおいて「”やさしさ”は、想像力と知性でできている」とありました。この実践の例としては、カウンセリングを受ける人の匿名性の重視や配慮が、技術で可能にしようとしている点等で見受けられます。他に、テクノロジーで実現を目指す”やさしさ”の事例はございますか?

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