2023/03/14

米国eHealthジャーナル第84号

Sanofi、CytoReasonのAI技術利用で提携

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炎症性腸疾患のサブタイプ特定と治療標的発見で

医薬品開発に機械学習(ML)を利用するイスラエル拠点のバイオテク・スタートアップ企業CytoReasonは1月23日、同社の人工知能(AI)プラットフォームをフランス拠点の製薬大手Sanofiにライセンスする複数年の提携契約を締結したと発表した。

2016年に設立されたCytoReasonは、あらゆるソースから得られた膨大なヒト分子データや遺伝子発現データを、オミクスデータや臨床データ、文献データ等と統合し、疾病ごとに、もしくは目的に応じた「コンピュテーショナル細胞中心型モデル」を作製することに特化している。これらの細胞中心型モデルは、研究に繰り返し利用される中で学習を重ねて改善されてゆき、より優れた標的の発見や、薬剤応答バイオマーカーの特定、医薬品候補の適応症の選択などが可能になるという。CytoReasonは現在、IBDや喘息、関節リウマチを含む免疫介在性疾患分野、非小細胞肺癌(NSCLC)や腎細胞癌、悪性黒色腫を含む癌免疫分野、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)や全身性硬化症、特発性肺線維症を含む線維症分野の3分野に注力している。


出典:CytoReason

合意の下Sanofiは、炎症性腸疾患(IBD)のサブタイプ特定とサブタイプごとの治療標的発見を目的として、CytoReasonのIBD疾患モデルを利用する。SanofiからCytoReasonへの支払い額は数百万ドル規模になるという。

CytoReasonの構築するモデルは、遺伝子や細胞レベルでのネットワーク分析や詳細なデータの収集などのための利用が想定されている。製薬企業は、標的の発見や疾患サブタイプの理解に利用できるほか、前臨床開発段階において治療薬候補の適応症を決定したり、標準ケアとの活性比較を行ったり、臨床試験における意思決定を支援する予測ツールとしても利用することができるという。

CytoReasonとSanofiは2021年にも喘息のエンドタイプの理解向上のため、SanofiがCytoReasonの細胞中心型モデルを利用するプロジェクトの開始を発表しており、今回はその提携の拡大となる。

CytoReasonによると、グローバル製薬上位10社のうち5社が同社の技術をすでに導入している。同社独自のヒトデータに裏付けられたML手法は「大手製薬・バイオテク企業による医薬品研究開発の在り方を変化させている」という。2022年2月にはPfizerが、免疫系の細胞中心型モデルの使用でCytoReasonと提携したと発表している。CytoReasonはPfizerから技術アクセス料、研究支援金のほか、マイルストーン金の支払いを受ける可能性がある。Pfizerとの契約の金銭面でのその他詳細は公開されていない。

(了)


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