2022/11/22

米国eHealthジャーナル第77号

AstraZeneca、Illuminaと提携

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医薬品標的の発見加速化にAIを利用

Illuminaは10月11日、医薬品標的の発見の加速化を目的として英国の製薬大手AstraZenecaと戦略的研究提携契約を締結したと発表した。Illuminaは、ライフサイエンスやトランスレーショナル研究、消費者ゲノミクス、および分子診断の分野における画期的な進歩を支える次世代シーケンサー(NGS)およびアレイテクノロジーの開発、製造、販売を手掛けている。

Illuminaは、次世代の医薬品発見はヒト遺伝学と機能ゲノミクス、データサイエンスの知識や進歩によってけん引されると考えており、「遺伝子けん引型アプローチ」の活用で医薬品開発の成功率を2倍以上に引き上げることが可能と期待している。本提携で両社は、DNAやオミクス・シーケンシングデータに人工知能(AI)を適用することで、有望な生物学的標的や医薬品候補のリターンを増大できるかどうかを調査する。

具体的には、霊長類データを使ってどの遺伝子変異が疾患の起因となるかを予測するよう訓練されたディープニューラルネットワーク(DNN)の「PrimateAI」と、前駆体mRNA配列がどのように切断されるかを予測するオープンソースの深層学習ツールである「SpliceAI」というIllumina独自の2つのAI基盤ゲノム解析ツールに、希少な遺伝子変異を発見するための解析フレームワークやゲノムの非コード領域を解析するAstraZeneca独自のAIツール「JARVIS」を含むAIプログラムを利用する。
提携の一環として両社は、これらのAI基盤ツールを活用してAstraZenecaのデジタルバイオバンクの大規模マルチオミクスデータを解析し、疾患に関わる遺伝子変異の特定を試みることに合意した。こうしたAIツールの利用は、ヒトの疾患発症に関与する遺伝子変異をより正確に発見することに寄与し、有効かつ安全な治療薬の開発プロセスにおける重要なステップになると期待されている。

出典:Illumina

提携期間は6カ月で、AstraZenecaとIlluminaは終了後、長期間の提携の可能性について評価を行うという。

AstraZenecaはAI創薬の取り組みを積極的に行っており、2017年8月にはマサチューセッツ州ボストン拠点のBergと、パーキンソン病などの神経疾患の治療に向けた新規標的と治療薬の同定および評価を目的に研究提携契約を結んだ。また2019年には、慢性腎疾患(CKD)および特発性肺線維症(IPF)の新規治療薬の発見と開発を目的にAIと機械学習(ML)を利用する長期的提携で4月に英国拠点のBenevolentAIと合意したほか、9月には医薬品発見の迅速化を目的とした計算創薬プラットフォームの利用でニューヨーク州ニューヨーク拠点のSchrödingerと、12月には呼吸器系疾患および心血管疾患の新規治療標的の発見にAIを活用する目的でマサチューセッツ州ネイティック拠点のGatehouse Bioと提携したことを明らかにしている。

2021年10月には、AIと計算科学を用いた治療薬開発を推進する目的で、米製薬大手のMerckとPfizer、イスラエル拠点のジェネリック薬世界最大手Teva Pharmaceutical Industriesの大手製薬3社、およびAmazon Web Services、Israel Biotech Fundと共同でAION Labを設立した。

(了)


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