2022/10/25

米国eHealthジャーナル第75号

NIH、医学研究分野のAI利用加速プログラムを開始

AI技術, 患者データ・疾病リスク分析, ジャーナル第75号, NIH, 行政・規制ニュース

適切なデータ生成と標準策定を目指す「Bridge2AI」

国立衛生研究所(NIH)は9月13日、生物医学および行動学の研究コミュニティによる人工知能(AI)の広範な利用を促すためのプログラム「Bridge to Artificial Intelligence、以下Bridge2AI)」を開始すると発表した。NIH共通基金(Common Fund)から向こう4年間で1億3,000万ドルを投じる計画で、国立眼病研究所(NEI)、国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)、国立生物医学イメージングおよび生物工学研究所(NIBIB)などNIH傘下の複数の研究所がその実施で協力する。


出典:NIH

NIHによると、AIは生物医学研究やヘルスケア分野ですでに利用されているものの、日常的に収集される生物医学や行動学関連のデータセットをそのままAIに分析・解釈させることは多くの場合困難であり、AIの普及を妨げる要因となっている。また、データを収集する社会的・倫理的コンテクストに十分な注意を払わない場合、分析や解析結果に不公平や偏見が生じる恐れも指摘される。

科学者がAIの力を有効活用するためには、適切なデータセットやAI利用規格とベストプラクティスなどが整備されている必要があるとの考えから、Bridge2AIでは学際的なチームを招集し、AI活用のためのツールやリソースの開発とAI分析に利用可能な詳細データの生成に取り組む。また、ツールの開発やデータの収集と分析の過程で倫理面の問題が引き起こされないように対策を講じるほか、AIで分析するデータセットに関するガイダンスや標準を策定する。

音声データなど、体の異常を検出するために役立つ多様な種類のデータを生成して研究コミュニティに公開し、AI分析に利用できるようにする。これらのデータは、救命救急ケアの現場で医師の判断を助けたり、患者の回復期における複雑な生物学的プロセスを理解したりするためにも利用される。

NIHは、AIによる処理が可能なデータを生成するためのデータ標準とツールを開発するプロジェクトにアワード4件を、またデータ生成プロジェクトで得られた成果や知識を統合し、その普及や教育を担うセンターを設立するプロジェクトにアワード3件を提供する。

(了)


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