2022/10/25

米国eHealthジャーナル第75号

OIG、メディケア受給者のパンデミック初年度のテレヘルス利用状況を報告

行政・規制ニュース, テレヘルス, ジャーナル第75号

テレヘルスの利用率は前年の88倍に上昇

保健福祉省(HHS)の監察総督室(OIG)は9月7日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック発生から最初の1年間に、メディケア受給者の約40%にあたる2,800万人以上がテレヘルス・サービスを利用したと報告した。

2020年には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行を背景としてバーチャル診療の需要が大きく拡大した。メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は2020年3月、高齢者のための公的保険であるメディケアにおいて、さまざまなテレヘルス・サービスに対する保険償還を一時的に認めると発表。これは、COVID-19が全米で大流行する中で、テレヘルスの利便性を活用してCOVID-19感染拡大を防ぎながら、メディケア受給者の健康維持を図るための措置である。この一時的な償還対象拡大により、メディケア受給者は自宅を含むあらゆる場所から、医師やソーシャルワーカーを含むさまざまなヘルスケア提供者による定期診察や精神医療カウンセリング、予防スクリーニングといったテレヘルス・サービスを利用できるようになった。

出典:Shutterstock

OIGによると、メディケアでのテレヘルス利用率は前年の88倍に上昇した。都市部では非都市部よりもメディケア受給者がテレヘルスを利用する割合が高かった。また、メディケアとメディケイドの二重資格者、ヒスパニック系受給者、受給者の中でも若い層、女性の受給者において、それ以外の受給者よりも利用率が高かった。テレヘルスの利用場所は、そのほとんどが患者の自宅あるいはヘルスケア施設以外のセッティングだった。

なお、2021年以降のテレヘルス利用は、若干の変動が見られるものの全体としては鈍化傾向にあることが複数の報告書で明らかにされている。また、ケアセッティングの嗜好調査では、バーチャル診療よりも対面診療を好む人がより多いことが示唆されている。しかし、容易で簡便なアクセスを提供し、プライバシー保護が高いテレヘルスは、ポスト・パンデミックにおいても高い需要が見込まれると考えられる。また、テレヘルスは、患者アクセスのみならずコスト面でも大きなベネフィットをもたらす。医療サービスプロバイダーや保険者の一部は、テレヘルスは一時的なトレンドではなく、将来は対面診療とバーチャル診療が組み合わされたハイブリッドケアに行き着くとみている。

(了)


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