2022/08/11

臨床医が解説するアジアのヘルステック(第6回)

AI搭載のポータブル上肢リハビリテーションロボット、「H-MAN」【後編】

臨床医, 医療機器, 医療コミュニケーション支援, 筋骨格系, AI技術, シンガポール, 非医療機器(非該当)

リハビリテーション領域におけるデジタルツールの可能性

 

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Source: Articares

前回は、リハビリテーションにより恩恵を受ける人々の潜在的な需要の大きさに供給が追いつかない状況において、自宅でも使用可能なリハビリテーションデジタルツールが開発されていることを紹介した。今回は、前記事でも触れたシンガポールのスタートアップ、Articares Pte Ltd (以下、Articare) が開発した「H-MAN」について、いくつかの研究報告をもとに詳しく見ていくことにしたい。

リハビリテーションが必要になる疾患として多いのが脳卒中に伴う麻痺であるが、下肢よりも上肢の機能回復が困難だと言われている。「H-MAN」は機械ロボットのスティックを操作しながら、画面に表示される様々なゲームシナリオに挑戦し、ゲーム感覚で上肢のリハビリを可能にするデジタルツールである。エクサゲーム(体を動かすゲーム)の要素を取り入れることで、より魅力的で、楽しみながらリハビリテーションを継続できるよう、工夫がなされている。通常、動機づけが難しい患者も少なくないことから、このような工夫は非常に有用と考えられる。

ロボットハンドルを操作する時、ゲームからの刺激に対する認知反応や運動の方向、さらに重要なこととして、筋力、敏捷性、スピード、協調性といった主要な上肢機能の改善を経時的に追跡することができる。また、最大速度までの平均時間(TpeakN)や、近年注目されているspectral arc length(SPARK)といったパラメーターも定量的に評価できる。*1 SPARKとは、2015年にBalasubramanianらが提唱した運動のスムーズさを評価するための変数であり、近年ではパーキンソン病の歩行障害に対する評価手段としても用いられているものである。*2

また、「H-MAN」は持ち運びも可能な大きさであるため、自宅に居ながらリハビリを続けることを可能にする。「Care Platform」の遠隔リハビリテーション機能により、セラピストは遠隔で患者に合わせたリハビリテーションプログラムを作成・修正し、経過の追跡やモニタリングも行うことができる。 この時、clinical artificial intelligence(cAI)と呼ばれるAIが、患者のリハビリテーションの進行具合に合わせ、アルゴリズムに則りリハビリテーションプランを提案するという。もちろん、治療者の代替になるものではないが、自宅に居ながら無理のないリハビリテーションを提案することで、重大な事故を防ぐことが期待されている。*3

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(出所:Articares)

 

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