2021/12/29

ヘルスケアの現場から考えるデジタルヘルス(第1回)

オンライン服薬指導を導入する上で考えられる課題

行政・規制ニュース, 薬局, テレヘルス, 医療コミュニケーション支援

服薬指導の現場から見える難しさ

(出所: shutterstock)

オンライン服薬指導は、スマートフォンやパソコンなどを利用して、薬剤師から服薬指導を受けることができ、さらに診察や薬の受け取りまでが自宅で完結することがメリットです。しかし、オンライン診療の利用者が増える一方で、オンライン服薬指導の普及は遅れているともいわれています。その理由としては、以下に示す問題点が存在します。

運送コスト・品質保持
オンライン診療とは異なり、オンライン服薬指導は医薬品を患者に渡すという対物業務が発生します。オンラインの場合、医薬品を薬局で患者に渡すのとは異なり、患者の自宅まで届けるために、配送業者への委託か、薬局スタッフによる配送などのコストがかかります。さらに、医薬品の品質保持という問題も発生します。
要冷所保存の医薬品では、高温になると品質保持ができません。特に夏は、配送時のトラック車内が高温になるため、クール便などの利用が必要です。筆者の経験では、容器に詰めた軟膏やクリームが高温で破裂したケースがありました。このようなことが起きないよう、医薬品の配送には、温度管理や梱包に配慮するこが重要です。

患者情報が不足する
対面での服薬指導に比べて、オンライン服薬指導では、患者の細かな表情の変化を読み取ることや、検査値やお薬手帳の確認が難しい場合があります。また、薬剤師が必要としている患者情報が不足するだけでなく、医薬品情報が患者に伝わらない危険性もあります。例えば、喘息やCOPD、インフルエンザの治療に使用される吸入薬は、デバイスごとに使用方法が異なり、吸入する力の個人差があります。そのため、患者さんにあった説明が必要です。対面で吸入指導する場合は、デモ器を使用し、手技の実践も可能ですが、オンライン服薬指導では代替策を考える必要があります。

(出所: shutterstock)

オンライン服薬指導の普及に向けた動き
令和2年4月10日に新型コロナウイルス感染症対策のため、オンライン服薬指導の規制緩和が時限的に実施されました。これによって、初診の患者へのオンライン対応や、電話による音声通話のみでも服薬指導が可能となりました。また、令和3年6月18日に閣議決定された「規制改革実施計画」では、オンライン服薬指導に対する規制緩和の継続と、診療報酬の検討が明記されました。これらの規制緩和によって、オンライン服薬指導の普及がさらに進んでいます。
高齢化社会が進む現代では、身体能力の低下などで薬局へ行くことが困難な患者が増加しています。上記のような課題はありますが、オンライン服薬指導が普及することで、すべての人が医療サービスを受けやすくなることを期待します。

(了)


【参考文献】


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