2023/05/09

米国eHealthジャーナル第87号

Nuance Communications、新規臨床ドキュメンテ―ションツールを発表

Nuance, 言語技術, 医療コミュニケーション支援, 音声技術, ジャーナル第87号

GPT-4を基盤とする臨床メモ草案の自動作成機能

Microsoftの子会社、Nuance Communications(以下、Nuance)は3月20日、OpenAIの人工知能(AI)言語モデルの最新版であるGPT-4を使用した新しい臨床ドキュメンテーションツールを発表した。

GPT-4は、2022年11月にリリースされて大きな話題となったChatGPTの後継製品で、3月14日に公開された。 ChatGPTは、ジェネレーティブAI(生成系AI)と呼ばれる次世代のAIで、コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ実用的な、そして、まったく新規のオリジナル・アウトプットを生成することができる。質問に対して驚くほど正確な解答を提供するだけでなく、詩を書いたり、与えられたあらゆるトピックに対応することが可能で、そのデビューは技術産業界に大きな衝撃を与え、瞬く間に世界的な現象となった。そして、AIブームの次の波に乗ろうとする投資家たちの熱狂に火をつけ、以来、ウォール街はGPTに「夢中」である。スイスの投資銀行UBSは、リリースから2カ月でChatGPTのアクティブユーザー数は1億人に達したと推定している。

Nuanceによると、医師のワークロードの軽減を目的とする病院向けのプラットフォーム「Dragon Ambient Intelligence」にGPT-4を統合した「Dragon Ambient eXperience (DAX) Express(以下、DAX Express)」と呼ばれる新製品は、テレヘルスや対面診療で行われる患者との会話から数秒以内で診療記録のための臨床メモの草案を作成する。この製品は、2020年に発売されたDAXドキュメンテーション製品を基盤とするもので、 Nuanceでは、今夏にDAX Expressのプライベートプレビューを実施する計画である。

2022年に約160億ドルでのNuance買収を完了したMicrosoftは、ChatGPTとGPT-4の開発メーカーであるOpenAIにも多額の投資を行ってきた。2019年にOpenAIへの初期投資を行ったMicrosoftは、2023年1月に100億ドルの追加投資を行うことでOpenAIと合意に至り、2月7日にはOpenAIの自然言語機能を取り入れた検索エンジン「Bing」の新バージョンを発表している。

「NuanceとMicrosoftは、ヘルスケアにおけるデジタル・トランスフォーメーションの支援という目標で協力しており、過負荷の状態におかれたヘルスケアプロバイダーのためのAI搭載ソリューションの進歩を推し進めている」とNuanceのCEOであるMark Benjamin氏は声明で述べた。

診療記録の作成が医師にとって大きな負担となっていることは多くの研究で示唆されており、米国の医療システムにおける最大の課題の1つとして認識されている。University of Wisconsinと米国医師会(American Medical Association)が発表した2017年の研究によると、米国のプライマリケア医は、電子医療記録(EHR)に診療記録を入力する作業に1日6時間を費やしている。

Nuance以外にも複数の企業が、診療記録作成の負担を軽減するためソリューションを提供している。例えばAmazonの子会社Amazon Web Services(AWS)は2019年12月に、会話に出てくる医学および薬理学の専門用語を正確に自動認識して、臨床ドキュメンテーション作業から医師や臨床研究者らを解放する音声認識技術の「Amazon Transcribe Medical」をリリースした。AWSによると、作成された診療記録は自動的に患者のEHRに統合される。


出典:Amazon Web Services

(了)


本記事掲載の情報は、公開情報を基に各著者が編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対してはいかなる責任も負いません。また掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
Copyright © 2023 株式会社シーエムプラス LSMIP編集部

連載記事

執筆者について

関連記事