2023/03/14

米国eHealthジャーナル第84号

Headspace Health、雇用主向けサービスをグローバル展開へ

テレヘルス, 精神疾患, ジャーナル第84号, Headspace, ウェルネス・運動療法

英国市場を皮切りに新規市場を開拓

包括的なメンタルヘルスケアをバーチャルで提供するデジタル・プラットフォーム大手のHeadspace Healthは1月31日、これまで米国のみで提供していた雇用主向けの同社サービスをグローバルに展開すると発表した。まずは英国市場に参入し、その後も新たな雇用主向け市場を開拓するとしている。同社のCEOのRussell Glass氏は、「英国へのサービス拡大は、世界の健康と幸福の改善に向けてメンタルヘルスケアを変革するというミッションにおける大きなマイルストーンとなるものだ」と述べている。

Headspace Healthは、バーチャル・メンタルヘルスケア分野で大きなプレゼンスを有する2つの企業――マインドフルネス・瞑想アプリのHeadspaceとオンデマンド・コーチングアプリのGinger――の合併により誕生した企業で、メンタルヘルスケアのための包括的なデジタル・プラットフォームを擁する。2社は2021年8月に合併することで合意し、同年10月に取引を完了した。現在、世界190ヶ国の1億人超にリーチがある。

Headspace Healthは、米国の大企業とその従業員にサービスを提供するB2Bビジネスに力を入れている。セルフガイド形式のコンテンツ、瞑想エクササイズやテキストベースのメンタルヘルス・コーチング、対面またはバーチャルで提供されるセラピーなどで構成される同社のサービスは、従業員ベネフィットの一貫として雇用主から提供されている場合には無料で利用することが出来る。そうでない場合には、サブスクリプション・フィーを支払うことで利用が可能だ。

Headspace Healthは2021年1月には人工知能(AI)基盤のメンタルヘルス/ウェルネスサービスを提供するSayana、9月にはBIPOC(Black, Indigenous, and People of Color)にフォーカスしたメンタル・ウェルネスアプリを手掛けるShineを買収するなど、メンタルヘルスケア分野でのサービスライン拡大に努めている。Sayanaは、AIチャットボットがユーザーとの対話を通じて、ユーザーの精神状態を把握・追跡し、認知行動療法(CBT)や弁証法的行動療法(DBT)、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)といったエビデンス基盤の治療法に根差したセルフケア・プログラムを、それぞれのユーザーに合わせて提供している。Shineは、文化の多様性に配慮したインクルーシブなプラットフォームで、セルフガイド形式のコンテンツや、ストレスや境界といったトピックについてのセルフケアコースに加え、バーチャル・コミュニティ・ワークショップを提供している。


出典:Headspace

メンタルヘルスケア分野は投資マネーが流入する「人気」のデジタルヘルス領域であり、2022年には同分野のスタートアップ企業に対して総額21億ドルの投資が行われた。しかし、デジタルヘルスに特化するベンチャー・ファンドのRock Healthによると、不確かなマクロ経済環境下で同分野への投資も落ち込んでいる。2022年は、急速に進むインフレとテクノロジー企業を中心とした株価の急落、そして7回にもわたって実施された利上げによって景気後退の懸念に見舞われた1年となり、困難な経済変化の中でそれまで上昇気流にあったデジタルヘルス企業の「価値」の多くが失われた。専門家らは、メンタルヘルスケア分野においてデジタルヘルス企業の合併統合が進む可能性を指摘している。

Headspace Healthは、レイオフを余儀なくされたデジタルヘルス企業の1つで、2021年12月に従業員の約4%にあたる50名をレイオフ(一時解雇)している。

(了)


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