2023/01/10

米国eHealthジャーナル第80号

テレヘルス大手のAmwell、Talkspaceを買収か

VC投資・M&A・決算, ジャーナル第80号, Talkspace, 精神疾患, テレヘルス, Amwell (American Well), イスラエル

2年足らずで価値の90%を失ったかつてのユニコーン企業

イスラエルの経済誌Calcalist が11月27日付で、「イスラエル系の米企業でテレヘルスサービス大手のAmwell(以前の社名はAmerican Well)が、メンタルヘルスケア領域でテレヘルスサービスを手掛けるTalkspace と、1株あたり1.5ドル、総額約2億ドルでのTalkspace買収に向けた交渉を進めている」と報じたことで、Talkspaceの株価は翌週月曜日(11月28日)に40%上昇した。Calcalistによると、1株あたり1.5ドルという買収額は、11月25日のTalkspace株式終価0.6ドルに150%のプレミアムを加えた金額に相当する。Talkspaceの2022年第3四半期末時点の時価総額は1億5,000万ドル規模で、これと比較すると、買収額は約30%増となる。

Calcalistによると、約500人の従業員を抱えるTalkspaceの活動の大半は米国に集中しているが、イスラエルを拠点とする投資会社のMeitavと保険会社のMigdal InsuranceがTalkspaceの株主として名を連ねており、イスラエルとのつながりがある。MeitavとMigdal Insuranceの他にも、イスラエルのベンチャー・キャピタル(VC)企業であるQumra CapitalとFirstime Venturesがそれぞれ約5%のTalkspace株式を保有しているという。

Talkspaceのサービスはサブスクリプションベースで、価格は有資格セラピストとのライブセッション(30分間)の利用頻度に応じて1週間あたり65ドルからの設定となっている。四半期または半年ごとの一括払いを選ぶと割引が受けられる。ライブセッションではなく、テキスト(アプリ内チャット)やビデオ・音声メッセージングによるセラピストとのセッション(1週間に5日間、セラピストが毎日回答してくれる)は、無制限で受けることが可能だ。雇用主や保険会社がTalkspaceのサービスを保険カバレッジに含めている場合には、もっと安価にサービスを利用することが可能だ。

Talkspaceは2021年1月に特別買収目的会社(SPAC)であるHudson Executive Investmentとの合併に合意し、同年6月の合併取引完了を経てナスダック株式市場への上場を果たしている。合併取引時の評価額は14億ドルで、上場時の初値は8.9ドル、上場日の株価終値は9.19ドルだった。

今回のAmwellの買収提案が合意に至った場合、Talkspaceは2年足らずの間にその価値の90%近くを失ったことになる。Amwellは数カ月前にも、約4億5,000万ドルでの買収をTalkspaceに打診したが、その交渉は破談になった。さらに、Talkspaceの競合企業であるカリフォルニア州拠点のMindpath HealthもTalkspaceの取得に関心を持ち、同様の価格を支払う意向を持っていたと言われている。

今回のAmwellとの取引をゴールまで押し上げる要因として、とりわけ11月23日にTalkspaceがナスダックから受け取った、上場廃止の警告状がある。警告状は、同社の株価が3カ月にわたって1ドルを下回る価格で取引されていることを受けたもので、これは上場を維持するための基本的な閾値条件を満たしていないことを意味する。

Calcalist は、Talkspaceについて、SPACを介して時期尚早に上場した企業の代表例であると断じている。Talkspaceの、テレヘルスによるメンタルヘルスケアの提供というアイデア自体は秀逸であり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック時には特に需要が高まって、顧客基盤が大きく拡大した。Talkspaceは当初、消費者向けアプリ企業としてスタートしたが、このセグメントは顧客獲得コストが高く、常に膨大な広告投資が必要であるため、利益に到達するのは困難だという理解がかなり早い段階で浸透し始めた。そこで、オリンピックで活躍する水泳選手のMichael Phelps氏を広告塔に起用する一方で、B to B市場に軸足を移し、従業員への福利厚生としてデジタル製品を提供する雇用主への販売を視野に入れるようになったという。

米国では、メンタルヘルスケアに対処するデジタルプログラムを保険カバレッジの一環として従業員に提供する雇用主が多く、Talkspaceの競合デジタルヘルス企業であるLyra HealthUnmindModernなども雇用主に照準を定めている。これは、メンタルヘルスの問題によって起こる欠勤や「プレゼンティーイズム」が、企業の生産性に大きな影響を与えるという理解に基づくものだ。しかし、当然ながらビジネスモデルの大幅な方向転換は、短期的にはTalkspaceの成長を阻む要因となった。

なお取引が成立した場合、支払いはAmwellの株式で行われる予定だが、Amwell自体、2021年のピーク時にはその価値(時価総額)が100億ドル近くあったものの、2022年12月現在、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で取引されている価値は約10億ドルにまで落ち込んでいる。 Amwellは2020年9月に、1株あたり18ドルで新規株式公開(IPO)を実施し、7億4,200万ドルを調達した。
Talkspaceの広報担当者は、この報道についてコメントを控えた。また、AmWellからのコメントは得られていない。

(了)


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