2023/02/28

米国eHealthジャーナル第83号

Qritive、シリーズA投資ラウンドで750万ドルを調達

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「数秒以内」に 迅速かつ正確な病理解釈を提供するデジタルパソロジー・プラットフォーム

一部報道は1月10日、人工知能(AI)を活用して癌の診断と患者ケアの向上を目指すシンガポール拠点のヘルスケア・スタートアップ企業QritiveがシリーズA投資ラウンドで750万ドルを調達したと報じた。MassMutual Venturesが主導したこの投資ラウンドには、SEEDS CapitalとExfinity Venture Partnersが参加した。Qritiveはこの投資ラウンドで得た資金を、地理的なプレゼンスの拡大、製品ポートフォリオの拡充、および承認獲得に向け充当するという。

2017年設立の同社は、「数秒以内」に迅速かつ正確な病理解釈を提供する診断支援ソリューションの提供に特化しており、「Pantheon」と呼ばれるデジタルパソロジー・プラットフォームを擁している。デジタルパソロジーとは、病理ガラススライドをデジタル化し、モニター上に表示して病理標本を観察する手法。デジタルパソロジーの利用により、病理画像の管理や保存が容易になるほか、高解像度での画像表示やAIによる画像解析が可能になる。MassMutual VenturesのマネージングディレクターであるRyan Collins氏は、「Qritiveは、世界中でデジタルパソロジーの採用を加速させることができるユニークな立場にある」と述べている。

出典:Shutterstock

Pantheonは、症例管理と報告、スライドの閲覧・分析、テレパソロジー、シノプティックレポートなどのツールを兼ね備えており、シンガポールと欧州の両方で承認を受け、利用されている。シノプティックレポートとは、病理レポートの一部として癌関連の最も重要な情報をまとめた要約で、癌の名前と種類、場所、グレードなどが記されている。QritiveのAI技術は、Singapore General Hospitalと共同で開発および検証されたもので、大腸癌、前立腺癌、リンパ腫など多くの種類の癌の診断を加速させるのに役立つという。Pantheonはまた、技術ベンダーを問わずに利用可能なソリューションであり、さまざまなサードパーティ製品との容易な統合を可能にしている。

SEEDS CapitalのジェネラルマネージャーであるTan Kaixin氏は、「癌の有病率は上昇しており、医療制度に負担をかけているにもかかわらず、診断の改善に向けた臨床医によるAIの活用は依然として進んでない」と指摘する。また、Exfinity Venture PartnersのマネージングパートナーであるChinnu Senthilkumar氏は「2030年には全世界の癌症例の約半分がアジアで占められると言われている。病理医が不足する中、診断におけるスピードと正確さが極めて重要となる」と述べている。

(了)


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