2022/11/22

米国eHealthジャーナル第77号

医療機器の商業化加速を目指す試験が始動

医療機器, FDA, 行政・規制ニュース, ジャーナル第77号

FDAの医療機器・放射線保健センター、向こう5年間に効果を検証

FDAの医療機器・放射線保健センター(CDRH)は10月11日、安全で効果的な高品質の医療機器の商業化加速を目指す「Total Product Life Cycle Advisory Program(以下、TAP)」のパイロットを開始すると発表した。CDRHは医療機器およびレーザー製品の規制を担うFDA内の組織で、こういった製品の有効性、安全性、技術仕様等を総合的に判断した上で販売認可を付与する。

TAPは、医療機器開発メーカーとCDRH間の開発早期段階からの頻繁な協議を促進することで、医療機器開発の予測可能性の向上と商業化までの時間の短縮を目指す。医療機器開発企業の参加は任意。TAPは、2022年9月末に失効した「医療機器ユーザーフィー法(MDUFA)」の再承認を認める法案が9月30日に成立したことを受けて実施される。ユーザーフィー法は、医薬品や医療機器等の承認審査に必要な諸費用を申請企業から手数料として徴収できる権限を FDA に付与する時限法で、これまで法成立後5年ごとの改正・再承認を経つつ、 審査官の増員や各種審査の財源に充当され、FDA の承認審査の迅速化に貢献してきた。

TAPのパイロットプログラムは、MDUFAの延長が認められた向こう5年間にわたり、段階的に実施される。第1段階は2023年度中(2023年1月1日)に開始され、心血管関連の医療機器候補、最大15製品を対象とする。2024年度にはさらに最大45製品を、2025年度には65製品を追加する。2026年度以降は年度ごとに最大100製品を追加する方針で、2027年度には合計で最大325製品を対象にTAPが適用される可能性がある。医療機器の対象疾患も2024年度以降、段階的に拡大する予定である。

パイロットプログラムは当初、画期的医療機器指定を受けた製品候補のみを対象とするが、2026年度にはSTeP(Safer Technologies Program)指定の基準を満たす医療機器候補も対象とする。STePは、非致死性の疾患の診断や治療を適応とするために画期的医療機器指定の基準を満たさないが、その革新的な設計を通じて現在利用可能な医療機器よりも顕著に安全な選択肢となり得る機器の開発と、商業化の時間短縮を目指して策定された。

FDAは、画期的医療機器指定の取得プロセス中の開発企業、また2026年度以降は新たにTAPが適用されるSTeP対象製品の開発企業に対し、TAPのパイロットプログラムについて通知し、年度ごとに参加を受け付ける意向だ。

なお、医療機器と医薬品のコンパニオン製品、また生物製剤評価センター(CBER)管轄の医療機器は、パイロットプログラムの対象外となる。

MDUFA再承認を巡っては、CDRHが、医療機器メーカーが製品開発に対する外部専門家の洞察を早期に得られるTAPは業界のベネフィットになると主張したのに対し、業界側は懐疑的な見方を示していた。CDRHと業界の見解は異なっていたものの、両者は最終的にパイロットプログラムを行いTAPを検証することに合意したという。

(了)


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