2022/09/13

米国eHealthジャーナル第72号

DiMe、センサー由来データの活用を支援する リソースキットをリリース

医療コミュニケーション支援, 医療機器, ウェアラブル, DiMe, ジャーナル第72号

センサー由来データのベネフィットや可能性を啓蒙

デジタル医薬(Digital Medicine)の安全で有効かつ倫理的な利用を推進する非営利団体のDigital Medicine Society(以下、DiMe)は7月18日、ウェアラブルや遠隔患者モニタリング(PRM)システムなどに搭載されたセンサーに由来するデータの広範な活用を支援する目的で、ヘルスケアおよびライフサイエンス組織、データ作成者、データプロセス担当者、そして、消費者のためのリソースキット「Sensor Data Integrations Toolkits」をリリースしたと発表した。リソースキットはウェブサイト上で誰でも閲覧することが出来る。

同リソースキットは、DiMeが実施した「Sensor Data Integrations project」と呼ばれるプロジェクトからもたらされたリソースを基盤とするもので、4種類のツールキット――「Data Architecture Toolkit」、「Data Standards Toolkit」、「Data Integrations Implementation Toolkit」、「Organizational Readiness Toolkit」――で構成される。Sensor Data Integrations projectは、センサー由来データを統合するデータプラットフォームを構築することによって臨床研究や患者ケアのけん引を目指す取り組みで、小売り大手Amazonのクラウドサービス・プラットフォームであるAmazon Web Services、米データベース大手Oracle、フロリダ州タンパ拠点の非営利癌治療・研究センターであるMoffitt Cancer Center、武田薬品工業、退役軍人局(VA)が参画した。

市場調査会社のInsider Intelligenceによると、PRMデバイスを利用する米国の患者数は2025年までに人口の約26.2%にあたる7,060万となる見通しだ。また、同じく市場調査企業のFacts and Factorsが2022年4月に発表した報告書によると、ウェアラブル技術の世界市場は2022年~2028年に約18.5%の年平均成長率(CAGR)で拡大し、3,805億ドル規模に到達する。センサー技術に由来するデータの量はますます増えているが、DiMeによると、ヘルスケアおよびライフサイエンス関連組織は、患者ケアおよび臨床研究のためのデータの収集、格納、分析、保護、効率的利用に必要な能力の獲得において、データの急速な増加に追い付けていない。

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出典:Shutterstock

製薬企業や医療機器開発企業が実施する、新製品もしくは既存製品の新規適応を検証する臨床試験で利用されたデジタルエンドポイントの種類(ユニーク・デジタルポイント数)は、2019年10月から2022年5月の間に950%以上増加しており、また、同期間中に臨床開発でデジタル・エンドポイント・データを収集した企業の数は12社から96社に拡大するなど、ヘルスケアおよびライフサイエンス関連組織によるセンサー由来データの利用は活発化している。その一方で、DiMeによれば解決されるべき課題も多いという。例えば、臨床意思決定に利用可能な高品質センサーデータを識別する能力は格段に飛躍した一方で、個々のポイントソリューションに依存していることから、実際のデータの利用状況は依然として限定的だという。

DiMeが今回リリースした4つのツールキットは、センサー由来データのベネフィットや可能性を啓蒙し、ヘルスケア・デリバリーと臨床研究の改善にこれらのデータを役立てることを目指したものだ。

Data Architecture Toolkitは、組織におけるデータ資産のアーキテクチャを概説するもので、これには、データの収集、格納、配置、統合および組織内利用を規定するモデル、規則、標準などが含まれている。DiMeによると、データ・アーキテクチャの最適化は、センサー由来データの価値を実現させるために必要不可欠となる。このツールキットには、データの種類(センサー由来データ、SNSデータ、ヘルスシステム由来の臨床データ、ウェアラブル由来データなど)に応じた参照アーキテクチャや、簡単な質問に回答するだけでセンサーデータのフローをデザインできるインタラクティブなツールが含まれている。

Data Standards Toolkitは、センサー由来データのART(accessible, relevant, and trustworthy)、つまり、可用性、関連性、信頼性を担保するデータ規格(スタンダード)に関するもの。患者保護を徹底しながら、データ交換を可能にするためには、各データ・エコシステムが、データの配備、格納、解釈における共通の言語を持ち、アプローチを共有することが必要となる。このツールキットには、センサー由来データのARTを担保するために規格が必要となる具体的な6つの要素である、データの収集、送信、処理、保護、セキュリティ、品質に関係する様々な規格を示す鳥観図が含まれ(図表参照)、鳥観図の中から任意の規格を選んでクリックすると、当該規格を説明するウェブサイトに飛ぶことができる。また、データ規格のライブラリが含まれており、利用者は、自身の組織のセンサーデータ統合に最も適したデータ規格を調べることができる。

Data Integrations Implementation Toolkitは、センサー由来データのARTを担保するために必要となる上記の6つの要素について、実際のデータ統合を実施するにあたって考慮すべき事項や作業フロー、ベスト・プラクティスなどを詳細に説明している。

Organizational Readiness Toolkitは、センサー由来データの活用面における組織の成熟度を説明する「Capabilities Maturity Model」や、いくつかの質問に答えることで組織のデータ統合成熟度を判定できるツールなどが含まれている。

(了)


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