2022/04/14

デジタルテクノロジーによって進化する歯科治療(第3回)

【後編】デジタルは手仕事を助けられるか ―歯科用3Dプリンターが変える近未来

医療機器, 臨床医, 日本, 歯科・口腔外科

歯科用3Dプリンターが挑む社会の諸問題

前編では、デジタルによる義歯製作の開発が進んできた背景について記しました。後編では、三井化学グループであるクルツァージャパン株式会社¹⁾ の歯科用3Dプリンター事業の展望について、引き続きクルツァージャパン株式会社デジタルソリューション事業部の城宏司氏に尋ねました。

3Dプリンターによる義歯製作では、これまでの方法に比べて新しい点があります。その一つが治療期間の短縮です。一般的に、歯科医院で採った口の中の型から作った石膏模型を使って、歯科技工所で時間と手間をかけ、歯科技工士によって義歯は製作されます。型をとってから、最終的な完成まで上下の顎の距離や位置、顎関節との関係や咬み合わせなどを確認、人工歯の試適などのため、その方によって異なりますが数回の来院が必要です。

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(出所:クルツァージャパン株式会社)

賀茂: 3Dプリンターによる義歯の製作では、どのように治療が変わると考えていますか。

城氏: これまでの物理的な型採りではなく、デジタルによる光学印象により石膏を固める時間などが必要無いことや、マシンにより速く工程が進むなどのため、義歯完成までの期間が短くなり得ます。口の中で材料を必要としない光学印象により、従来の型取りが難しい在宅診療や障害者歯科への貢献も考えられます。

賀茂: これまでと異なる技術の導入には難しい面があると思いますが、どのような課題があるでしょうか。

城氏: 技工所を経営する歯科技工士の方にも、新しい技術を導入する動きがあり、歯科医師、歯科技工士の方々への認知や操作マニュアル、講習会の充実化にも尽力したいと考えています。三井化学のグループとして、お客様に選択していただけるMachine(機械)x Material (素材) x Man (人材) を開発して販売とご提供ができる企業を目指しています。弊社としては、保険収載が普及の鍵とも感じています。

賀茂: 現在の3Dプリンター事業のシェアはいかがですか?

城氏: 3Dプリンターは造形方式によって本体価格が大きく異なるため一概には言えませんが、医療機器届出されている3Dプリンターでは12.8%のシェアで国内第3位です。3Dプリンターは造形するSTLデータの設定値、プリンターの造形パラメータ、そしてインク開発など全てのソリューションが連動していないとうまくいきません。この分野において三井化学グループとして取り組むことで差別化を図っています。 

賀茂: 海外での展開に関してはいかがでしょうか?

城氏: 本社がドイツにあるので、むしろ海外の方がビジネスとしては主流で全世界に販売網があります。さらに、三井化学グループの一員としての活動が強みです。

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