Pear Therapeuticsの資産、605万ドルで売却へ

DTx企業のClick Therapeuticsが一部資産を獲得

デラウェア州の連邦破産裁判所は5月19日、資産売却オークションにおいて、処方箋デジタル・セラピューティクス（DTx）企業Pear Therapeutics（以下、Pear）の資産が分割され、売却先が決定したことを明らかにした。Pearはこれまでにベンチャー・キャピタル（VC）などから4億ドルを調達し、SPACとの合併取引時におけるプロフォーマベースでの企業価値は16億ドルに上ったが、オークションでの売却額は605万ドルとなった。

Pearは、DTxのパイオニア企業として知られ、物質使用障害（SUD）患者の治療を適応とする「reSET」、オピオイド使用障害（OUD）患者による外来治療プログラム継続率の向上を目的とする「reSET-O」、慢性不眠症患者の治療を適応とする「Somryst」の3種類のFDA承認済み処方箋DTxを保有する。Pearは2021年6月にはSPACであるThimble Point Acquisition Corpと合併することで合意し、同年12月の取引完了を経てナスダック（NASDAQ）上場を果たした。しかし、処方箋DTx事業について広範囲な保険カバレッジを獲得することができず、収益化に失敗した同社は上場から2年も経たない2023年4月に、連邦破産法第11条（チャプターイレブン）の適用を申請した。

裁判所資料によると、Pearの資産は入札企業4社――DTx企業のClick Therapeutics（以下、Click）、Harvest BIO、睡眠ソリューション企業のNox Health Group、韓国ソウル拠点のヘルスケア技術企業Welt――に分割された。

最大の入札者はNox Health Groupで、Somrystに関するPearの資産を獲得する。Noxはこの資産に390万ドルを支払う予定だ。 Somrystは、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスを利用して実施されるプログラムで、不眠症に対する認知行動療法（CBT）や、アルゴリズムに基づく睡眠制限といった介入治療を、個々の患者の状態に合わせて調整、提供する。

PearのInvention Science Fund（ISF）が保有するライセンスとパテントは、Harvest BIOが落札した。同社は、統合失調症、多発性硬化症、うつ病、大うつ病性障害を適応症にPearが開発していた処方箋DTxに関連する資産や、Pearの企業商標、reSETおよびreSET-Oの資産、そして、患者と処方医師を繋げる患者用ポータルである「PearConnect」も購入する。Harvest BIOは、これらのPearの資産を総額203万ドルで購入する。

Clickは、ISF資産に関連するものを除く、Pearの処方箋DTx開発プラットフォームの関連パテントを7万ドルで落札した。ニューヨーク州ニューヨーク市に本社を置くClickは、禁煙、大うつ病、統合失調症、不眠症、急性冠症候群、片頭痛、過活動膀胱、慢性腰痛、肥満などを含む、さまざまな適応症のための新規DTxを開発し商業化している。

WeltはPearの片頭痛を適応症とするDTx関連資産を5万ドルで購入する。Weltも新規DTxを開発しており、開発パイプラインには不眠症や摂食障害、アルコール使用障害（AUD）、サルコペニアを適応症としたDTx候補を擁している。

（了）

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