2023/06/27

米国eHealthジャーナル第90号

FDA、分散型臨床試験のガイダンス案を発表

FDA, 臨床試験, ジャーナル第90号, 行政・規制ニュース

DCTの導入について製薬企業と協力することを約束

FDAは5月1日、分散型臨床試験(DCT)の実施についてガイダンス案を発表した。ヘルスケアにおけるデジタル化の波は、医学研究や疾病の診断および治療に大きな変革をもたらしており、エコシステム全体でデジタルヘルス技術(DHT)の採用が顕著に進んでいる。DCTは、スマートフォンやウェアラブル端末などのDHTを活用して、従来的な治験施設の枠を超えて実施されるもので、ハイブリッド試験やバーチャル臨床試験とも呼ばれている。センサー基盤のデータ遠隔収集では、より継続的あるいは頻繁な被験者モニタリングが可能になるほか、乳幼児であったり、認知障害のため症状の自己申告が困難な被験者のデータも集めやすくなる。

FDAはかねてからDCTを推進してきたが、DHTの進歩と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック発生により対面診療が困難になったことが、DCT採用の動きを加速化したとみている。今回発表されたガイダンス案は、DCTを活用することで試験参加の障壁を減らし、医薬品や医療機器の研究開発を前進させることを目的とする。

製薬業界もDCTに高い関心を示しており、一部の企業は10年ほど前から臨床試験のバーチャル化を試みている。DHTの活用により、患者の治験実施施設訪問をなくす、もしくは訪問頻度をなるべく少なくすることで、臨床試験の地理的・時間的な制約を取り払い、被験者登録の難航を理由とした試験開始の遅延や試験の失敗を回避できる方策となることが期待されている。COVID-19のパンデミック中には、製薬企業は感染防止のため進行中の臨床試験のプロトコル変更を余儀なくされたが、それが結果的に臨床試験のバーチャル化を後押しすることとなった。地理的制約がない、もしくは少ないことはDCTの利点の1つであり、リアルワールドでの患者人口をより正確に反映する、多様性のある被験者集団を擁することが可能となる。

ガイダンス案では、DCTは通常の臨床試験と同一の要件を満たす必要があるとして、DCTの試験デザインに関する検討事項やリモート試験の実施方法、データ取得のためのデジタルヘルス技術活用などについて推奨事項をまとめた。FDAは、1つのDCTの中でさまざまな場所で行われる活動をコーディネートする作業は困難をともなう可能性があり、DCTを実施する際には分散化推進のための計画書を作成するべきと述べた。FDAは、DCTの導入について製薬企業と協力することを約束し、8月1日まで同ガイダンス案についてコメントを募っている。

ヘルスケアにおけるDHTの役割が拡大する中でFDAは2021年12月には、臨床試験参加者のデータを遠隔収集するDHTの利用についてガイダンス案を発表し、臨床試験の目的に合致した適切なDHTを選択する際の検討項目や、DHTに関連したリスクなどについて説明している。

(了)


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