2023/04/25

米国eHealthジャーナル第86号

ビヘイビオラルヘルスのためのテレヘルス利用、パンデミックを機に急増

ジャーナル第86号, 精神疾患, テレヘルス, 研究・調査

不透明な経済環境下で精神科バーチャルケアへの投資は減少

ヘルスケアに特化する市場調査会社のTrilliant Healthは3月10日、ビヘイビオラルヘルスのためのテレヘルス利用のトレンドに関する調査報告書「Trends Shaping the Health Economy:Behavioral Health」を発表した。ビヘイビオラルヘルスとは、メンタルヘルス障害や物質使用障害(SUD)のほか、日常生活でのストレス因子やストレス起因性の症状の総称である。

報告書よると、ビヘイビオラルヘルスのためのテレヘルス利用は、すべてのケア設定とあらゆるサービスプロバイダーの間で、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックのスタート以来、45倍増加した。この増加は、頻繁にビヘイビオラルヘルスのための医療サービスを利用する患者によってではなく、初めて助けを求める人や、時々サービスを利用する人によってもたらされたものであるという。

報告書によると、パンデミック以前には、全ビヘイビオラルヘルス診療のうちテレヘルスが利用されていた割合は1%未満であった。しかし、2022年第2四半期までに、ビヘイビオラルヘルス診療の32.8%がテレヘルスを通じて実施されるようになった。

ビヘイビオラルヘルスの診療件数(2022年第2四半期時点)はパンデミック以前のレベルから18.1%増加しており、特に18歳未満の患者で増加が顕著だった。18歳未満で摂食障害の診断を受けた患者は同期間に107.4%増加した。また、同年代でのうつ病の診断件数も同期間に44%増加していた。

ビヘイビオラルヘルスを管理するために医薬品を服用する米国人は増えているという。注意欠陥多動性障害(ADHD)治療薬の「Adderall」、もしくはそのジェネリックを服用する22歳~44歳の患者では、2018年第1四半期から2022年第2四半期にかけて、処方件数が58.2%増加した。その一方で、21歳未満および45歳以上のADHD患者における処方件数は横ばいであった。

米国の多くの人々は、ビヘイビオラルヘルスに特化した医療サービスプロバイダーが比較的少ないコミュニティに住んでいる。米国の平均的なカウンティの、住民10万人あたりのビヘイビオラルヘルスケア・プロバイダーの人数は81人である。テレヘルスは、プロバイダーが不足する地域において治療アクセスを患者に提供する優れた手段となる。しかしながら、ビヘイビオラルヘルスのためのバーチャルケアやデジタルヘルス・プラットフォームなど、この分野へのプライベート・エクイティ(PE)投資は不透明な経済環境下で減少傾向にあり、2022年には289件の投資案件に総額26億ドルが投じられた。これは2021年と比較して、資金調達額では52.9%、案件数では15.8%の減少にあたる。

報告書の著者らは、「経済学の原則に基づき、需要が供給を上回り続ければ価格は上昇することになる。ヘルスケアのGDP構成比率が20%に迫る勢いの米国において、その経済的負担を本質的に増大させることになる」と記している。

(了)


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