2023/01/10

米国eHealthジャーナル第80号

疾患啓発オンラインコミュニティの MyHealthTeam社、脂漏性皮膚炎患者向けサイトを開設

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皮膚科学領域のスペシャリティファーマArcutis社が後援

サンフランシスコを拠点とする MyHealthTeam, Inc. (以下、MyHealthTeam社) は12月1日、皮膚科領域のスペシャリティファーマである Arcutis Biotherapeutics, Inc. (以下、Arcutis社) の後援を受け、脂漏性皮膚炎患者向けに疾患啓発オンラインコミュニティ「mySebDermteam」を開設したと発表した。

(出典) MyHealthTeam

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脂漏性皮膚炎
患者の7割が病名すら知らず、ケアまでに平均3.6年

脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が活発な頭皮や顔面に発生することが多い、慢性または再発性の炎症性皮膚疾患である。成人人口のおよそ5%、全米で1,000万人以上が罹患しているものの、疾病の一般的認知度は決して高くない。患者を対象とした最近の全国調査によれば、約7割が診断前に脂漏性皮膚炎について聞いたこともなく、別の疾病に起因したものだと勘違いしていたと言う。
困ったことに、医師の診察を受ける程に深刻であるとは考えていない重症度を見誤る患者が6割にも及ぶ。症状の発症からケアを求めるまで平均3.6年かかり、そもそも必要な情報をオンラインで見付けるのが難しいと訴える調査結果に、疾病啓蒙教育の必要性が関係者間で認識されてきた。

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MyHealthTeam社
~ 患者専用コミュニティサイトを疾病ごとに横展開 ~

2012年創業のMyHealthTeam社は、慢性疾患を抱える患者が診断と治療に辿り着くことをゴールとした患者向けオンラインコミュニティを、「My疾患名Team」ブランドで次々と展開してきた。

皮膚科領域ではこれまで、湿疹「MyEczemaTeam」、化膿性乾癬炎「MyHSteam」、多汗症「MyHyperhidrosisTeam」、結節性痒疹「MyPrurigoTeam」、乾癬・乾癬性関節炎「MyPsoriasisTeam」、白斑「MyVitiligoTeam」を開設しており、「MySebDermTeam」はMyHealthTeam社全体として45番目の疾患別専門サイトとなる。

 
喘息、肥満症、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、子宮内膜症、白血病、
てんかん、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症、自閉症、など多岐に及ぶ
(出典) MyHealthTeam

各サイトには、疾病に応じた医療専門家パネルのメンバーと編集チームを擁し、疾病の症状や危険因子、治療の選択肢から、臨床試験に参加するためのガイド、身体的/精神的/社会的/経済的な対応を含む日常生活への助言、最新の調査結果や研究報告、専門医へのインタビュー記事など、コンテンツを編纂・公開している。

MyHealthTeamが唯の疾患啓発サイトと異なるのは、実在の患者が自身の個人的な経験を共有し、他患者の相談に応じるなど、相互扶助的なオンライン患者サポートコミュニティという特徴を有している点にある。周囲の理解不足ないしは恥ずかしさから、患者が孤立を深めることなく、早期受診へと誘い、治療へのエンゲージメントを高めようと言う目論見だ。

会員登録は無料で、世界13ヶ国で利用することができる(日本は対象外)。世界の製薬会社、およびその他のバイオ医薬品およびヘルスケア企業の多くと提携してきた。
MySebDermTeamを後援するArcutis社は、脂漏性皮膚炎に加え、アトピー性皮膚炎、乾癬、慢性手湿疹、白斑、円形脱毛症、など、堅牢な開発パイプラインを有している。
その筆頭となるPDE4阻害剤「ロフルミラスト (roflumilast)」の局所フォーム剤について、第Ⅲ相試験を通じて良好なトップライン結果が得られており、23年第1四半期に新薬承認申請(NDA)を提出する計画であることが発表されている。

皮膚疾患は総じて、痛みや痒みなど身体的な不快感のみならず、社会的なスティグマを伴うことが多い、厄介な疾病だ。脂漏性皮膚炎の症状は、他人の目にさらされ易い症状であるが故、家族や友人、医療提供者に相談することすら恥ずかしいと躊躇する患者が6割近くもいることが前出の調査で明らかになっている。
本来ならば素人判断せずに、視診や触診などで実際に診察を受けることが重要であることは言うまでもないが、まずは患者が正確な医療情報が得られやすくなる第一歩が重要である。患者同士の肉声で、関与度を高めるMyHealthTeam社のアプローチに期待したい。

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PatientsLikeMe、他

最後に、患者同士のオンラインコミュニティの先駆者に言及しない訳にはいくまい。
ボストンを拠点とする2004年創業の PatientsLikeMe LLC (以下、PatientsLikeMe社) は、2,900以上の疾患や病態、830,000名以上の患者の利用実績を誇る、最大の患者コミュニティの一つであり、かつ患者主導型の臨床研究でなくてはならない存在となっている。これまでに、21年1月の武田薬品工業など、製薬各社と提携を積み重ねており、ジャーナル次号81号(発行1月24日)では、慢性疾患・性的健康・COVID-19などを対象とした消費者直販型の在宅診断検査を手掛けるLetsGetChecked社との提携ニュースを報じる予定。

患者中心主義を掲げサービス開発する各社の取り組みは、日本でも珍しくなくなってきた。

Activaid株式会社は、IBD(炎症性腸疾患)患者が日々簡単に健康状態を記録し、経時変化をグラフで可視化したり、担当医と共有して治療に役立てたり、専用アプリを開発している。
臨床試験でのマッチング機能など追加開発を進め、現在では、2021年3月に開発した臨床試験プロジェクト管理サービス「SmarTrial」を主力サービスに展開している。

アトピヨ合同会社が開発する「アトピヨ」は、その名の通りアトピー性皮膚炎患者を対象に、文字だけでなく画像を投稿することで、アトピー特有の皮膚症状を匿名で記録・共有できるアプリである。
22年10月には、京都府立医科大学と共同研究を開始し、アトピヨ内のデータを継続的に解析することで、新しい悪化因子を発見することと、アンメットメディカルニーズの把握を目指している。

治験における製薬企業の課題解決を一気通貫でサポートするプラットフォーム開発を目指す、2017年創業の株式会社Buzzreach (以下、バズリーチ社) は、「病気で悩む人が支えあう」、「同じ境遇の人たちとつながり、実際の経験や知りたい情報を共有できるQ&Aコミュニティ」を目指して、患者特化型SNS「MiiLike (ミライク)」を開発しており、23年にサービス開始の予定。

(了)


本記事は以下の公式発表を翻訳要約し、適宜解説を加えたものである。


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