2022/09/27

米国eHealthジャーナル第73号

メディケアにおける遠隔患者モニタリング(RPM)の利用、大幅に拡大

疾病管理・患者モニタリング, ジャーナル第73号, 行政・規制ニュース

パンデミック下で進むデジタル技術を利用したケア提供

JAMA Internal Medicine誌に掲載された8月1日付の研究「Trends in Remote Patient Monitoring Use in Traditional Medicare」によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行を背景として、メディケアでは遠隔患者モニタリング(RPM)の利用が大幅に拡大した。

65歳以上の高齢者と一部の障碍者を対象とする公的保険制度のメディケアでは、2019年1月1日からデジタル技術を活用して医師が患者に提供するRPMサービスをメディケア償還の対象としている。具体的には、PRMサービスに対して新規の診断・治療コード(CPTコード)を割り当て、個別のサービスアイテムとしてメディケアに保険償還請求を行えるようにした。

研究者らは、メディケア・フィー・フォー・サービス(FFS)に対する2018年1月1日~2021年9月30日の保険償還請求を精査し、RPM サービスに対するCPTコードの償還件数に基づきPRM利用状況を調査した。そして、パンデミック下でのRPM利用状況をRPM以外の特定サービスの利用状況と比較するために、持続グルコースモニタリング(CGM)サービスのメディケア償還件数を用いた。 CGMサービスには、個別のCPTコードが割り当てられている。

その結果、受給者10万人当たりのRPM利用は、2020年2月の91件から2021年9月には594件に拡大していた。これは555%の増加にあたる。一方、同期間中のCGM利用は42%の拡大に留まった。

研究者らは、どの診療科の医師がRPMを利用しているかも調査した。パンデミック期間中のRPM利用の63.1%はプライマリケア医によるもので、19.7%が心臓専門医、4.1%が呼吸器専門医によるものだった。RPMによるケアの対象とされる適応症については、高血圧症が最も多く、RPMサービスの62.5%を占めていた。そのほか、糖尿病が8.3%、睡眠障害が3.9%、脂質異常症が3.5%だった。どの適応症においてRPMを利用するかは、医師の専門分野によっても異なり、例えば呼吸器専門医では、睡眠障害と呼吸器系障害が76.4%を占めていた。

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出典:Shutterstock

メディケアへの全請求に占めるRPMの割合は依然として小さいものの、RPMの利用は拡大しており、この傾向が今後も続けばメディケア・コストに大きな影響をもたらす可能性があるという。多くのメディケア受給者は高血圧症を患っている。RPMにかかるコストは、再入院の削減をはじめとする、期待されるRPMのベネフィットに照らしてバランスが取れたものである必要があり、研究者らは、どのような場面でRPMが最大のベネフィットを発揮できるかを特定するための研究が必要だと述べた。

(了)


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