2022/08/23

米国eHealthジャーナル第71号

Rock Health、デジタルヘルス投資トレンド報告書を発表

研究・調査, VC投資・M&A・決算, ジャーナル第71号, Rock Health

2022年第2四半期のデジタルヘルス投資は減速

デジタルヘルスに特化するベンチャー・ファンドのRock Healthは7月10 日、2022年第2四半期および上半期のデジタルヘルス投資トレンドを分析した報告書を発表した。

同報告書によると、2022年上半期にはデジタルヘルス領域に総計で103億ドルのベンチャー・キャピタル(VC)投資が行われた。ディール件数は329件(Rock Healthでは200万ドル以上の投資案件のみを集計)で、ディール1件あたりの平均投資額は3,120万ドルだった。上半期の総VC投資額の内訳は、第1四半期が62億ドル(前年同期は67億ドルで若干の減少)、第2四半期が41億ドルで、第2四半期の資金調達実績は2020年第2四半期以降で最も少ない水準にとどまった。また、急速な金融引き締めなどを背景として金融市場が減速する中、株式上場を果たしたデジタルヘルス・スタートアップ企業の数は2021年上半期の23社から2022年上半期にはゼロとなった。減速は、合併・買収(M&A)領域でも顕著で、月間平均M&A件数は2021年上半期の23件から2022年上半期には16件に減少した。

2021年は、ディール平均投資水準および総VC投資額が過去最高を記録した年となったが、2022年に入って減速が浮き彫りとなっている。ただしRock Healthは、「2022年のデジタルヘルス投資は、記録的な年となった2021年と比較すると縮小しているものの、依然として2020年の投資実績を上回るペースで推移している」と説明している。つまり、2021年が異常値であり、複数年に渡る投資トレンドとして見る場合、全体的にはデジタルヘルス・スタートアップへの投資が引き続き拡大傾向にあることが見て取れるという。

Rock Healthによると、第1四半期からのVC投資額の大幅な減少は、デジタルヘルス投資トレンドというよりも、より大きな経済トレンドを反映している可能性がある。依然として2021年からの活況の影響が続いていた第1四半期とは異なり、第2四半期には、ロシア・ウクライナ戦争や急速に進むインフレへの懸念が、投資家の弱気を招いた。しかし、デジタルヘルス投資に特化するベテラン投資家がマーケットから撤退する可能性は低く、新規投資家からのニューマネーは縮小するとしても、ベテラン投資家による既存のポートフォリオ企業への投資は継続される見通しだとしている。

その一方でRock Healthは、こうした環境によって成長期のデジタルヘルス企業が今後の資金調達に苦労する可能性を指摘している。2022年上半期のシリーズC案件におけるディール1件あたりの平均投資額は前年同期と比較して22%減少、また、シリーズD以降の案件における平均投資額は同12%減少となった。なお、初期段階企業に対しては、シリーズA案件におけるディール1件あたりの平均投資額が1,800万ドルと、前年同期と同水準の投資が実行されている。

Rock Healthは2022年の上半期について、「よいニュースばかりでもないが、悪いニュースばかりでもない」と評している。

(了)


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