2022/08/09

米国eHealthジャーナル第70号

デジタルヘルス・スタートアップ企業の臨床的堅牢性は依然として低い

Rock Health, 研究・調査, ジャーナル第70号

自社製品を差別化する大きな機会が依然として存在

デジタルヘルス・スタートアップ企業の臨床的堅牢性(Clinical robustness)を分析した研究論文、「Assessing the Clinical Robustness of Digital Health Startups: Cross-sectional Observational Analysis」が6月20日付でJournal of Medical Internet Research(JMIR)に掲載された。

デジタルヘルスに特化するベンチャー・ファンドのRock Healthとジョンズ・ホプキンス大学の研究者からなる研究班は今回、Rock Healthが保有するデータベース、FDAによるデジタルヘルス製品の承認申請関連データ、臨床試験情報サイト「ClinicalTrials.gov」掲載のデータなどを活用して、「臨床試験の完了およびFDAへの承認申請」と定義した臨床的堅牢性について、デジタルヘルス・スタートアップ企業の横断的観察研究を実施し、臨床試験完了スコアと承認申請スコアの合計を各企業の堅牢性スコアとした。

その結果、調査対象としたスタートアップ企業224社(平均操業年数は7.7年)のうち、全体の44%にあたる98社は堅牢性スコアが0、また15%にあたる34社はスコアが1だった。その一方で45社は、5以上の堅牢性スコアを獲得した。224社の堅牢性スコアは平均2.5で、臨床試験完了スコアは平均1.8、承認申請スコアが同0.8だった。また、堅牢性スコアの中央値は1だった。

堅牢性スコアは、デジタルヘルス企業のフォーカス分野によってもバラつきがあり、診断に注力する企業の平均スコアは2.8と最も高かった。続いて、治療に注力する企業の平均スコアが2.2、また予防に注力する企業の平均スコアが1.9だった。販売対象別では、雇用主向けに商品を販売する企業の平均スコアが最も高く3.1だった。一方、医療サービスプロバイダー向けでは平均が2.7、消費者向けでは平均が2.2、そしてペイヤー向けが最も低く、平均2.0だった。

研究班は、デジタルヘルス企業が同社製品の臨床面、経済面もしくは患者エンゲージメント面での「訴求ポイント」についての定量的な主張の件数についても調査した。訴求ポイント件数の平均は1.3で、全体の43%の企業は製品について何らの訴求も行っていなかった。研究班によると、雇用主向けに製品を販売する企業は、医療サービスプロバイダーや消費者、もしくはペイヤー向けに製品を販売する企業と比較して、臨床面、経済面、患者エンゲージメント面での利点をより多く主張する傾向が示唆された。

研究班によると、臨床的堅牢性スコアは、訴求ポイントの件数、スタートアップ企業の資金調達の総額、あるいはスタートアップ企業の創業年数のいずれとも相関関係が見出されなかった。デジタルヘルス・ツールは増加の一途を辿っており、多数のデジタルヘルス企業によって、さまざまなケアニーズに対応する製品の開発が進められているが、業界全体における臨床的堅牢性および訴求ポイントについてのコミュニケーションの度合いは依然として低い、と研究班は述べている。この研究結果は、デジタルヘルス企業にとっては自社製品を差別化する機会が、またデジタルヘルス製品・サービスの利用者にとっては製品やサービスの価値についてさらなる情報をデジタルヘルス企業に要求する機会が依然として顕著に存在していることも意味している。

(了)


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