2019/12/10

米国eHealthジャーナル 第9号

Augmedix、シリーズB投資ラウンドで1900万ドルを調達

ジャーナル第09号, ウェアラブル, VC投資・M&A・決算, Augmedix, 医療コミュニケーション支援

診療記録作成サービス

サンフランシスコを拠点に診療記録作成サービスを提供するAugmedixは、10月24日、シリーズB投資ラウンドでRedmile Group、McKessen Venturesその他から1900万ドルを調達したと発表した。これで、同社が調達した資金総額は8200万ドルとなった。

Augmedixは2012年創立のスタートアップ企業。「臨床医と患者の関係に人間らしさを取り戻し、米国医療システムの最大の課題-診療記録作成の負担軽減-に対処する」を使命に掲げ、独自の自然言語処理技術と訓練された診療記録作成担当者(以下「記録担当者」)の連携により、リアルタイムで一貫した診療記録を作成するプラットフォームを開発しサービスを提供している。

仕組みは次の通り。臨床医は、Augmedixから提供される「Google Glass」または「スマートフォン」を使用して診察すると、HIPAA*1 に準拠したAugmedixの米国内およびオフショア拠点(インド、バングラデシュ、スリランカ、ドミニカ共和国)で働く記録担当者がこのデバイスを通して診察の様子をライブで受信し、リアルタイムで記録を作成する。臨床医は自ら記録を取る必要がないため、診察中、従来のようにコンピュータ画面を見ながらではなく、患者と向き合って話ができる。作成された記録は電子医療記録(EHR)にアップロードされ、それをその臨床医が確認・承認する。記録担当者がリアルタイムで診察の様子を見ているため、臨床医が記録担当者に質問をして過去のデータ等を照会することも可能であり、必要であれば記録担当者が臨床医に質問する機会もある。現在、25を超える専門領域に本サービスが提供されており、大半のEHRシステムに対応可能。 

AugmedixはSutter Health、CommonSpirit Health、US Oncologyなど15のヘルスシステムと提携関係にあり、国内臨床医の10%超をカバーしている。米国では臨床医の燃え尽き症候群が問題となっており(一部調査では半数以上との報告も)、EHRへの記録入力も一因とみられている。本サービスを利用することで臨床医が記録関連業務にかける時間を1週間あたり15時間削減でき、臨床医はその時間を使ってそれまで以上に多くの患者を診察したり、個々の診察の質を高めたり、他業務の時間に充てるなど、ワークライフバランスをとるために使うことができる。臨床医の生産性は15%、満足度は40%上昇するという調査結果も得られている。

今後、Augmedixはこの資金を、自動工程を含め製品開発を促進するため、また同社サービスを全国のヘルスシステムや個人医療機関に拡大させるために投じる予定。

(了)


*1
米国では、医療情報のプライバシーを保護する包括的な連邦法として1996 年にHIPAA (Health Information Portability and Accountability Act)が制定された。HIPAAはその後、社会情勢と共に継続的に改定され、2002年にプライバシー規則、2003年にセキュリティ規則が追加された。その後2009年に制定されたHITECH(Health Information Technology for Economic and Clinical Health Act) では、HIPAA違反に対する罰則が厳しく定められた。これらの法律は、医療情報の機密性を踏まえ、医療情報の保護責任を持つ事業体がプライバシーとセキュリティを確保するための対策を講じることを義務付けている。


本記事は公式発表を翻訳要約し、適宜解説を加えたものである。


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