2019/10/08

米国eHealthジャーナル 第5号

CDIDとATENTIVが提携

ジャーナル第05号, デジタルセラピューティクス

 
 

ADHDの子供のためのビデオゲームセラピー「ATENTIVmynd 」

ニュージャージー州拠点の専門子供病院である
Children’s Specialized Hospitalは8月20日、特定のヘルスケアニーズを抱える子供のためにソリューション開発を行う同病院傘下のセンター、CDID(Center for Discovery, Innovation and Development)と、注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供のためのビデオゲーム「ATENTIVmynd」の開発メーカー、ATENTIVが提携したことを発表した。両者は今後10年に渡り、プライマリケア医を介して「ATENTIVmynd」を配備するケアモデルの開発で協力する。

 



ATENTIVmyndは、脳とコンピュータを連動させて人間の能力を高めたり活動を補助するBCI(Brain-Computer Interface)と呼ばれる技術を基盤とする。この技術は、医療の世界ではBMI(Brain-Machine Interface)として早い段階から研究され、四肢麻痺患者の運動・リハビリ支援、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の意志伝達手段として利用されている。
 

ATENTIVmyndのユーザーは、脳波形(EEG)検出センサー内蔵のヘッドバンドを付けながら、タブレットでゲームを行う。ゲーム上のアバターは、ユーザーが集中すればするほど速く走ることができ、集中力が途切れると動きが遅くなる仕組みだ。ATENTIVmyndは、集中力、記憶力、論理的思考能力、意思決定力といった遂行機能(高次脳機能)のうち、問題のある部分を特定し、脳の機能を育成するために、ユーザーのためにカスタマイズされた課題を提示する。

小児のADHDの治療のためにビデオゲームを用いるというアイデアはATENTIVだけのものではない。マサチューセッツ州ボストン拠点のAkili Interactive Labs(以下、Akili)は現在、ADHD治療のためのビデオゲームAKL-T01についてFDAの承認審査結果を待っている。Akiliは、2013年9月にNature誌に発表されたUCSF(University of California, San Francisco)の研究に基づき設立された企業。UCSFの研究班は「NeuroRacer」と名付けたビデオゲームで様々な年齢の人の認知制御の状況を評価、さらに臨床試験において、ビデオゲームをプレイした高齢者の認知能力がプレイしなかった対照群と比較して改善したことを示した。マルチタスク処理に関係する認知機能の神経マーカーとして知られる、前頭葉前部皮質内の前頭正中線θ波(低周波振動)および前頭部と後頭部の脳領域間のθ波コヒーレンス(干渉性)を測定したところ、NeuroRacerによるマルチタスク・モードの訓練を続けるに伴い、高齢者の脳は主要な神経ネットワークを調整し、脳の働きが若者の脳の働きに似てきたことが示された。

塩野義製薬は2019年3月、AKL-T01と、自閉スペクトラム症(ASD)患者向けにAkiliが開発中のAKL-T02について、日本および台湾における独占的開発・販売権を塩野義が獲得することでAkiliと合意したことを明らかにしている。

 

(了)

 

 
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