2023/05/23

米国eHealthジャーナル第88号

Uber Healthが、処方箋医薬品の即日配送サービスを開始

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既存プラットフォームで患者の服薬順守を支援

オンデマンド配車サービス大手、Uberのヘルスケア事業であるUber Healthは3月30日、医療機関向けの同社のケア・プラットフォームに、患者への処方箋医薬品即日配送サービスを付け加えたと発表した。ソフトウェア企業ScriptDropとの提携によって可能となった同サービスでは、配送可能エリア内にある全てのNCPDP(National Council for Prescription Drug Programs)登録薬局を利用することが可能だ。

Uber Healthは、オンデマンド型配車サービス大手のUberが医療機関を対象として2018年3月にスタートしたHIPAA(Health Information Portability and Accountability Act)準拠配車サービス事業で、病院や診療所、リハビリセンターなどの医療機関が、集中管理型の専用ダッシュボードを使って、診察時間に合わせて事前に配車を予約し、患者やその介護者を送迎させるサービスを提供している。HIPAAは、医療情報のプライバシー保護を目的に1996年に制定された包括的な連邦法で、その後2009年に制定されたHITECH(Health Information Technology for Economic and Clinical Health Act)とともに、医療情報の保護責任を持つ事業体に対してプライバシーとセキュリティの確保を要請している。

Uber Healthは2020年8月にNimbleRxとの提携を通じて処方箋医薬品の配達事業に参入を果たした。これは、特定の都市の一般消費者および企業顧客を対象とするオンデマンド・サービスで、食品や雑貨のオンデマンド手配を可能にする「Uber Eats」のアプリを介して、ユーザーが処方箋医薬品の配送を手配するのを可能にする。その後2021年3月にScriptDropと提携し、この事業を拡大した。ScriptDropは、薬局の既存のソフトウェアやワークフローにUberのアプリを統合することで、配達ソリューションのアクセスを提供している。

HIPAA準拠配車サービス機能により、病院や診療所などのヘルスケアプロバイダーや保険プランは、患者への配車サービスをコーディネイトするために既に利用している同一のプラットフォームから、必要な処方箋医薬品をシームレスに患者に直接手配することが可能となる。 Uber Healthによると、サービスエリア内にある薬局であれば、どの薬局を利用することも可能で、これには「340B薬局」も含まれる。340B薬局とは、「340Bプログラム」に参加する「340B病院」と契約関係にある薬局をいう。340Bプログラムは、低所得者や保険非加入者の医療ケアアクセスを意図した連邦プログラムで、製薬企業は340Bプログラムの下、340B病院に対する処方箋医薬品の割引提供が義務付けられている。

多くの患者が処方された通りに医薬品を服用しないのは、そもそも薬局に医薬品を受け取りに行くことができていないことが理由の1つとなっている。Uber Healthは、この新サービスにより、患者ケアチームが医薬品を患者に直接発送するよう手配し、薬の到着を追跡することで、完全に 「ループを閉じる」ことができると述べている。


出典:Uber Health

一部報道によると、Uber Healthは今後、メディケア・アドバンテージ(MA)の加入者やメディケイドの受給者などを対象として、健康食品や一般用医薬品(OTC医薬品)の配送にも近々参入する計画だ。

(了)


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