2019/07/23
米国eHealthジャーナル試読版
Altoida、シリーズA投資ラウンドで630万ドルを調達
アルツハイマー型認知症を予測するデジタル・バイオマーカー
AIと機械学習を利用してアルツハイマー型認知症を予測するデジタル・バイオマーカーを開発するAltoidaは5月30日、シリーズA投資ラウンドにおいて630万ドルを調達したと発表した。
M Venturesが主導した同投資ラウンドには、Grey Sky Venture Partners、VI Partners AGG、Alpana Ventures、FYRFLY Venturesが参加した。
デジタル・バイオマーカーとは、デジタル・ツールから生成される消費者起点の行動データおよび生理学的データで、健康関連アウトカムに影響を及ぼしたり、健康アウトカムの説明や予測に役立てることが可能なものを指す。Altoidaのデジタルプラットフォームは、タブレット専用アプリとウェブベースのダッシュボードで構成される。
アプリは、拡張現実フレームワークを利用して、ユーザーの空間記憶や展望的記憶などのテストを提供する。ユーザーは、タブレットのカメラ機能をオンにして、部屋の中を映しながら歩き回り、タスクをこなす。空間記憶のセクションでは、3つのバーチャルオブジェクトを任意の場所に設置し、その後にすべてのオブジェクトを回収する。
これから何をするかという予定を記憶する展望的記憶のセクションでは、火災報知ボタン、電話、重要な書類、の3つのバーチャルオブジェクトを利用する。
これは、火事避難を想定したテストだ。
ユーザーは、空間記憶セクションと同様に、任意の場所にこれらのオブジェクトを設置するが、回収する順序は、まず「火災報知ボタン」を押してから消防署に「電話」で知らせ、燃えては困る「重要な書類」をピックアップする、と決められている。
テストはユーザーの自宅もしくは医師のオフィスで実施され、医師はダッシュボード上でその結果を受け取る。
Altoidaによると、半年に1回のペースでテストを実施することで、患者の認知機能の変化をモニタリングすることが可能だ。
アプリ、ダッシュボードともにHIPPAに準拠しており、このプラットフォームはクラスII医療機器としてFDAから承認を受けている。
Altoidaによると、テストはメディケア償還の対象となっている。認知機能の低下やアルツハイマー型認知症を早期に検出できれば、より個別化された医療を提供でき、予後や生活の質の改善にもつながる。
米国をはじめ多くの先進国で高齢化が進むなか、複数のスタートアップがアルツハイマー型認知症に照準を絞っている。
サンディエゴを拠点とするDthera Sciencesは、AIを活用して「回想法(Reminiscence Therapy)」と呼ばれる心理療法を実施するデジタル・セラピューティクスを開発している。
回想法とは、思い出に触れ人生を振り返ることで精神の安定を図る一種の心理療法で、高齢者の精神状態を安定させる効果を示す研究が多数存在するが、実施するには、患者に記憶を蘇らせるような物を見せたり、患者の話を聞いたりといった専門家による介入が必要となる。
Dtheraのデジタル・セラピューティクスの仕組みは以下の通り。
まず、高齢者の家族が、高齢者本人に関係する過去の写真や音声ファイル、動画などを、自身のモバイル機器やコンピュータからDtheraのクラウドに送信する。そして、それらを基にAIがドキュメ ンタリー風の“物語”を作成し、安全なプライベート・サーバに保存する。
AIから家族に、特定のテーマに沿った写真や音声ファイルのアップロードを指示することもある。こうして作られた物語は、高齢者が専用のタブレットを手に取るだけで、ボタン操作などは一切なしで自動的に再生される。そして、AIは高齢者から得られる生体フィードバック、具体的には患者の表情を カメラで認識し、患者の反応に応じて物語の内容を最適化する。
Dtheraの製品は、認知症患者の家族に治療への参加を促し、ケア提供者ならびに患者自身の負担を軽減する効果も期待される。家族は自身のモバイル機器やコンピュータからファイルを送るだけでよく、患者は自宅や高齢者向け施設、 あるいは回想法の専門家やケア提供者が 身近にいない過疎地など、どこにいても 専用タブレットがあればケアを受けることができる。
FDAは2018年8月、Dthera独自の回想法をベースとする要処方箋デジタル・セラピューティクス、「DTHR-ALZ」を画期的医療機器に指定した。
適応は、「アルツハイマー型認知症の神経認知機能障害に関連した興奮状態やうつ状態の軽減」だ。
(了)
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