2022/07/26

米国eHealthジャーナル第69号

Insilico Medicine、シリーズD投資ラウンドで6,000万ドルを調達

創薬, Insilico Medicine, VC投資・M&A・決算, AI技術, ジャーナル第69号

開発パイプラインの拡充とAIプラットフォームの更なる開発を目指す

香港およびニューヨーク州ニューヨークを拠点とする人工知能(AI)創薬スタートアップ企業のInsilico Medicine(以下、Insilico)は6 月2日、シリーズD投資ラウンドで6,000万ドルを調達したことを明らかにした。同ラウンドには、Insilicoの既存投資家であるWarburg PincusやB Capital Group、Qiming Venture Partners、BOLD Capital Partners、Pavilion Capitalのほか、新規の投資家としてBHR Partnersと、米国西海岸を拠点とする社名非公開のアセットマネジメント企業が加わった。また、Insilicoの創設者兼CEOであるAlex Zhavoronkov博士も同ラウンドに参画した。

Insilicoは、AI創薬プラットフォーム関連サービス事業と創薬事業を展開しており、創薬事業では独自のパイプラインを構築し、複数の前臨床プログラムの開発を手掛けている。Insilicoは、2019年9月のシリーズB投資ラウンド以降にAI創薬プラットフォームを製薬企業にライセンス導出する事業を強化し、現在では世界の製薬企業トップ20社のうち9社で、InsilicoのAI創薬プラットフォームが活用されているという。提携先の顔ぶれには、米製薬大手のPfizerやJanssen Pharmaceutica、ドイツの製薬大手Boehringer Ingelheimが含まれる。

InsilicoのAI創薬プラットフォームである「PHARMA.AI」は、3つの技術で構成されている。その1つである「PandaOmics」は、マルチオミクス解析を基盤とした新規標的の探索エンジンで、Insilicoによると、バイオインフォマティクスの知識がなくてもPandaOmicsを利用することでオミクスデータの分析を実行できる。「InClinico」は、疾病や標的、臨床試験に関するビッグデータに基づき、試験デザインの弱点を把握してその成功率を予測するプラットフォームだ。「Chemistry42」は、新規低分子の迅速なデザインを可能にする機械学習(ML)基盤の化合物生成プラットフォームで、Insilicoによると、Chemistry42を活用すれば、ほんの数日で新規の化合物の構造および設計を得ることができる。

Insilicoでは今回のシリーズD投資ラウンドで調達した資金を、PHARMA.AIの更なる開発と自社創製パイプラインの拡充に利用する。Insilicoのパイプラインで最も開発が進んだプログラムは、現在フェーズI臨床試験段階にある。同社は5月に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルス、SARS-CoV-2の自己複製に必要な3C様プロテアーゼ(3C-like protease)を阻害する前臨床候補を選定したと発表したばかりだ。

(了)


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