2019/07/09

米国eHealthジャーナル試読版

製薬業界でもデータ活用強化の動き

患者データ・疾病リスク分析

AstraZenecaは腎疾患と肺線維症、Amgenは癌分野で 

AstraZenecaとBenevolentAIは4月30日、慢性腎疾患(CKD)および特発性肺線維症(IPF)の新規治療発見と開発を目的に、AIと機械学習を利用する長期的提携で合意したと発表した。

AstraZenecaは、ゲノミクスデータと化学データ、および臨床データを提供し、BenevolentAIは、標的特定プラットフォームと、遺伝子、タンパク質、疾病および化合物などの科学データとそれぞれの関係性についてのバイオ医学的知識を提供する。両社は機械学習とAIを駆使して得る結果を基にCKDとIPFの発症機序を理解し、新規薬剤標的の迅速な同定を目指す。

別件でAmgenは5月2日、癌分野にプレシジョン・メディシンのデータを役立てることでSyapseと提携したと発表した。

Syapseは、世界的な医療提供者ネットワークを通じて得られたプレシジョン・メディシンに関する洞察を活用する。また両社は、ソフトウェアやデータ解析ツールを用いて、地域のヘルスシステムと協力し、多様な患者が優れた治療に迅速にアクセスできる環境作りを目指す。合意の下、両社は癌分野の治療アウトカムを評価する観察研究分析を実施する。「Syapse Learning Health Network」から、Amgenが実施する臨床試験の参加条件に合致する患者を特定し、地域のヘルスシステムの現場でこれらの臨床試験に参加できるようにする。両社はまた、ネットワーク内の医師や研究者が、分析データやリアルワールド・エビデンス(RWE)、提携機会を得られるようにする。Amgenは、RWEを癌分野の承認申請に活用する可能性がある。AmgenとSyapseは、治療薬の迅速な上市を支援するRWE標準の構築でも提携する。

Syapseは2018年1月、癌専門医にプレシジョン・メディシンのデータを提供するためのソフトウェアや解析ソリューションの共同開発を目的に、Rocheと複数年の提携を締結している。近年、大手製薬やバイオテク企業がIT系企業と提携し、AIなど最新のデータ分析ツールを医薬品発見・開発・承認申請に活用しようとする例が増加している。Concerto HealthAIは、癌分野の臨床試験加速を目的にBristol-Myers Squibbと3月に、プレシジョン・オンコロジー分野の進展に向けたRWD理解のためのAIモデルやリアルワールド臨床電子医療記録(EMR)の活用でPfizerと4月に提携したことを発表している。

(了)


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