2023/01/10

米国eHealthジャーナル第80号

Amazon、Amazon Clinicを開始

ジャーナル第80号

全米32州でバーチャル診療サービスの提供へ

Amazon.comは11月15日、安価なバーチャル診療サービスを提供する「Amazon Clinic」の開始を発表した。このバーチャルクリニックでは、男性型脱毛症、胸やけ、にきび、ふけ、季節性アレルギー、結膜炎、尿路感染症(UTI)など、約20種類の一般的な症状に対してケアを提供する。 Amazon Clinicは全米32州で展開される予定で、診察費は症状によって様々だが、患者には前もって価格が提示される仕組みだ。Amazon Clinicのサービスは保険ではカバーされないため、利用する場合は自費での治療となるが、その費用は30ドル~と概して安価である。この価格に処方箋医薬品は含まれていない。


出典:Amazon

このサービスを利用する場合には、まず、用意されたリストから任意の症状を選択し、その後に自身の居住する州を入力する。居住州でサービスが利用可能であることが確認された後は、サードパーティー・テレヘルス企業(SteadyMDもしくはHealthTap)を選択し、診察を希望する臨床専門家(医師もしくはナース・プラクティショナー)を選ぶ。湿疹や酒皶、性器ヘルペスなど、症状によっては事前の診断が必要なケースもある。

あとは、いくつかの質問からなる問診票に答えるだけで、問診票を確認した臨床専門家から数時間以内にポータルを介してメッセージが届く仕組みだ。Amazon Clinicによると、電話やビデオ通話、ライブチャットの必要はなく、臨床専門家とのやりとりはメッセージベースとなる。サービスの利用には事前の支払いが必要だ。なお、症状によっては、患部の写真を数枚アップロードする必要がある。

臨床専門家は、患者の情報に基づき、処方箋や推奨される行動などを含む治療計画をメッセージで送る。患者は、治療計画の受領後、最長14日間に渡り追加料金なしで臨床専門家にフォローアップの質問をメッセージで送ることができる。処方箋医薬品は、患者が希望する薬局あるいはAmazon Pharmacyで受け取ることができる。

Amazon Clinicは、Amazonによるヘルスケア市場でのビジネス拡大の動きの最新のものだ。Amazonは同分野での地位を確立しようと、これまでにさまざまな試みを行い、挫折も経験してきた。金融大手のJPMorgan Chase、投資会社大手のBerkshire Hathawayと共同で2018年1月に共同で立ち上げた非営利のジョイントベンチャーであるHavenは「米国の壊れたヘルスケアサービスを改善する」と鳴り物入りでスタートしたものの、本格的な始動に至ることなく事業が終了することとなった。またAmazonは、ワシントン州シアトル在住の同社従業員向けにバーチャル・ケアと対面ケアを組み合わせた最良のハイブリッドケアを提供する目的で2019年9月に立ち上げたパイロット・プログラムの「Amazon Care」を、ニューヨークやサンフランシスコを含むシアトル以外の大都市においても雇用主向けに展開してきたが、8月には、雇用主向けAmazon Careの提供を2022年末で中止することを明らかにした。Amazonは社員宛ての電子メールで、Amazon Careは「雇用主顧客にとって持続可能な長期的ソリューションではなかった」と中止の理由を説明した。

(了)


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