2022/10/25

米国eHealthジャーナル第75号

Verily、Alphabet主導の投資ラウンドで10億ドルを調達へ

ジャーナル第75号, Google, VC投資・M&A・決算

精密医療イニシアチブを拡大

Alphabet傘下のライフサイエンス企業であるVerilyは9月9日、Alphabetが主導する投資ラウンドで10億ドルを調達すると発表した。Verilyは、同社の創業者Andy Conrad氏がCEOを退任することも併せて発表した。現プレジデントのStephen Gillett氏が1月にCEOに就任する予定だ。Gillett氏はVerily 参画以前には、Alphabet傘下のサイバーセキュリティ企業、Chronicleの共同創設者兼CEOだった。Chronicleは現在、Google Cloudの一部になっている。

2015 年にAlphabetから分離・独立して誕生したVerily(以前はGoogle Xの一部門)は、ライフサイエンスとヘルスケアに注力している。同社は、高度なハードウェア、ソフトウェア、科学、医療における専門知識を活用して、疾病の予防と管理、健康データの収集・整理・活性化のためのツールや装置の開発に取り組んでいる。同社が提供するサービスには、スマート臨床試験プラットフォームの「Project Baseline」、慢性疾患管理サービスの「Onduo」、医療システム分析ツールの「Verily Value Suite」、創薬支援ツールの「Immune Profiler」などがある。


出典:Verily

Project Baselineは、デジタル技術を活用し、より多くの患者や臨床医に研究に参加してもらうことで、包括的で質の高いデータの収集を目指している。このプラットフォームは、被験者登録、被験者組み入れ基準などの試験説明、患者自己報告ツールといった参加者対応エコシステムのほか、研究者のための研究上の意思決定支援ダッシュボードや分析ツールを備えている。Project Baselineウェブサイト上では、様々な疾病領域において展開されるスマート臨床試験について被験者の募集を行っており、組み入れ基準を満たす18歳以上の米国在住者は、誰でも被験者としてProject Baselineの臨床試験に参加できる。

Onduoは、フランスの製薬大手Sanofiと2016年に立ち上げたジョイント・ベンチャーで、当初は、糖尿病患者のための疾病管理と、糖尿病性足部潰瘍および壊疽の予防を目的としたデジタル・ソリューションに注力していた。Sanofiは2019年12月に Onduoからの撤退を決定している。Onduoでは現在、糖尿病に加えて、高血圧症、体重管理/糖尿病予防、メンタルヘルスを対象としたデジタル・セラピューティクス(DTx)を提供している。


出典:Verily

Verilyは今回の巨額投資を、リアルワールド・エビデンス生成やヘルスケアデータ・プラットフォームなどを含む同社の精密医療イニシアチブを拡大するために活用する計画だ。また、さらなる戦略的パートナーシップへの投資や企業買収の可能性も検討するとしている。

Verilyはすでに複数のライフサイエンス企業や医療機器メーカー、政府機関と提携関係を構築している。7月には、心臓遠隔モニタリング企業のiRhythm Technologiesが、Verilyとの提携で開発した心房細動患者モニタリング用の「ZEUS System」について、510(k)経路でFDA承認を獲得したと発表した。Verily は8月には、バイオ製薬企業、そーせいヘプタレスとの創薬を目的とした共同研究の初期結果を発表している。ほかにも、Project Baselineで複数の製薬企業と協働するほか、化粧品大手のL'Oréalや、デンタルケア会社のColgate-Palmolive、非営利アカデミック医療センターのMayo Clinicとも連携関係にある。

Verilyは2021年8月には、効率性と質の高い臨床研究をより簡便に実施するための、試験サイト向け臨床試験管理システム(CTMS)プラットフォームを開発する株式非公開企業のSignalPathを買収した。SignalPath買収取引の金銭面での詳細は非公開だが、Verilyにとっては2015年の設立以来初の大規模買収となった。SignalPathの獲得によりVerilyは、Project Baselineの機能を強化・拡大した。

(了)


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