2023/03/14

米国eHealthジャーナル第84号

Akili Interactive、従業員の約30%を削減へ

精神疾患, ジャーナル第84号, ゲーミフィケーション, Akili, VC投資・M&A・決算, デジタルセラピューティクス

不況下でより長いランウェイを確保

一部報道は1月18日、小児の注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者向けのデジタル・セラピューティクス(DTx)を手掛けるAkili Interactive(以下、Akili)が従業員の約30%を削減する計画であると報じた。 Akiliが証券取引委員会(SEC)に提出した書類によると、46人が影響を受けるこのレイオフは、2023年第1四半期末までに完了する見込み。

マサチューセッツ州ボストン拠点のAkiliは、8~12歳のADHD患者における注意機能の改善を適応としたビデオゲーム基盤の処方箋DTxである「EndeavorRx」について、2020年6月にFDA承認を獲得した。実質的に同等な製品が存在しない、安全性リスクが低~中程度の革新的医療機器を対象とするデノボ(de novo)申請経路で承認されたEndeavorRxは、ゲームを活用してユーザーの行動変容を促す「ゲーミフィケーション」を用いた疾患治療製品をFDAが承認する初のケースであるとともに、ADHDに関連する症状の改善を目的として承認された初の処方箋DTxでもある。

CEO兼共同創業者のEddie Martucci氏は、従業員に宛てたEメールメッセージの中で、「現在の経済環境下でAkiliが独立性を維持するためにはオペレーションを縮小する必要がある。社内外の支出を削減して持続可能な経営モデルを確立し、黒字体質への転換を目指す」と述べた。今後は、EndeavorRxの普及と適用範囲の拡大に注力するとしている。

Akiliは、注力分野を定めてその資本を確保するために、ADHD以外のプログラムを保留にするという。影響を受けるプログラムには、自閉症スペクトラム障害(ASD)、多発性硬化症(MS)、大うつ病性障害を適応症とするDTx候補や、試験開始が予定されていた認知モニタリング・プログラムなどが含まれる。

Akiliは2022年8月に、特別買収目的会社(SPAC)であるSocial Capital Suvretta Holdings Corp(以下、SCS)との合併を完了し、ナスダックに上場を果たした。SPACとは、それ自体は特定の事業を持たずに、主に未公開会社・事業を買収することのみを目的とした投資ビークルで、事業を営む被買収会社を存続会社として上場させる機能を持つ。しかし上場後に株価は暴落し、2022年第3四半期には5,320万ドルの純損失を計上した。EndeavorRxの2022年第3四半期売上は、わずか8万2,000ドルだった。

SEC提出書類でAkiliは、2023年の非GAAPベースの営業費用について5,500万ドルから6,000万ドルになると予想している。同社は今回の人員削減により、2025年第1四半期までキャッシュランウェイ(企業がキャッシュ不足に陥るまでの残存期間)が確保されたと述べている。

(了)


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