2019/08/27

米国eHealthジャーナル 第2号

HIV予防治療対象者を機械学習で同定

ジャーナル第02号, 患者データ・疾病リスク分析

 
 

EHR解析でPrEPの使用拡大を促進 

HIV感染高リスク者を医師が同定するにあたり、患者の電子医療記録(EHR)を解析するアルゴリズムの利用が効果的であることが示す研究結果がThe Lancet HIV誌に7月5日付で掲載された。同研究は
国立衛生研究所(NIH)傘下の2機関から資金提供を受け、実施された。

1~2種類の抗レトロウイルス薬を定期的に服用する暴露前予防(PrEP)は、HIV感染リスクを下げる高い効果が実証されているが、いまだ十分に活用されていない。米国疾病管理予防センター(CDC)によると、米国のPrEP候補者は最大約110万人に上ると推定されるが、2016年にPrEPを処方された人は、そのわずか7%にあたる7万8,000人程度だった。利用者が少なかった理由としては、医師の時間不足や知識不足が考えられる。

1つ目の研究では、マサチューセッツ州のヘルスケアシステムに加入する100万人以上の患者の2007年から2015年のEHRデータを対象に、HIVカウンセリング利用の有無や性感染症(STI)の診断コード、HIVやSTIのラボ検査関連データ、STI治療のための医薬品の処方といった変数を用いて、機械学習技術によりHIV感染予測アルゴリズムを作成した。合計57万人以上の患者データに対してそのアルゴリズムを検証した結果、HIV感染者と非感染者、またPrEP服用者と非服用者を高精度に認識し、2016年だけでHIV感染高リスク者でPrEP投与を受けなかった人として9,500人以上を同定した。

カリフォルニア州北部のヘルスケアシステムが所有する患者370万人以上のEHRを使用し、HIV感染を予測するアルゴリズムを開発した2つ目の研究でも、高リスク者を同定する優れた成果が示された。このモデルでは、高リスクの性行動の兆候、HIVやSTI検査の頻度、STIの診断や治療といった変数を用いた。

NIHは、EHR基盤のPrEP候補者予測アルゴリズムの有用性が示されたと評価。HIV感染高リスク者を自動的に予測する手法がEHRに統合されれば、医師による効率的なPrEP候補者の判定を支援し、PrEP使用状況の改善とHIV感染予防につながると期待した。

 

(了)


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