2019/07/23

米国eHealthジャーナル試読版

自閉症発症に非コード遺伝子変異が関係

患者データ・疾病リスク分析, 研究・調査

機械学習を用いた予測的アプローチで示唆

AIを使った深層学習アプローチによって、自閉症の発症に非コード遺伝子変異が関連している様子を明らかにした研究結果がNature Geneticsに5月27日付で発表された。
自閉症スペクトラムと遺伝子の関係性についての研究は数多く、これまでにタンパクをコードするさまざまな遺伝子の変異と自閉症との関連が明らかにされている。しかし、これらは家族歴のない散発性自閉症の30%を説明しているにすぎない。

タンパク質をコードしない、かつては「ジャンクDNA」と呼ばれた非コード遺伝子における変異と自閉症の関係も、長年にわたり示唆されていた。現在、非コード遺伝子には調節領域が含まれ、遺伝子の発現場所やタイミングを制御する重要な役割を担っていることが知られている。しかし、非コード遺伝子はゲノム全体の98~99%を占め、それを包括的に検証するためには、それぞれの遺伝子変異についてさまざまな細胞型や組織にまたがる2,000種類以上のタンパク質間相互作用との関係性を考慮する必要があり、機械学習を用いてさえ困難とされてきた。

今回Princeton University率いる研究班は、広範囲にまたがる非コード遺伝子の変化が遺伝子発現にどのように影響するかを予測できるように機械学習モデルを訓練するという、新たなアプローチを採用した。

研究では、散発性自閉症児がいるが、その親や兄弟は自閉症を罹患していない2,000家族以上の全ゲノムを収集した「Simons Simplex Collection」とよばれるゲノム・コレクションを、機械学習モデルを使って検証した。研究班は、コレクション内の1,790家族のデータを使って、ゲノムのパターンと、生物学的に重要性の高いDNA領域を見極める方法について機械学習モデルに学習させた。そして同モデルは、非コード領域における変化が2,000種類以上のタンパク質間相互作用のいずれかに重要な影響を及ぼしているかどうかを予測し、遺伝子を制御している可能性の高いDNA配列と、その制御に影響を与えている可能性の高い遺伝子変異をランク付けしたリストを作成した。

その結果、同定された非コード領域における変異は、コード遺伝子に注目した以前の研究で自閉症との関係性が示唆されていたのと同様の遺伝子や機能に影響を与えており、コード領域と非コード領域の両方の変異が自閉症の発症に関連した遺伝子的機能不全に集約的に関与している様子が示唆された。

研究班はAIアプローチについて、自閉症だけでなく、癌や心疾患などほかの疾患における非コード遺伝子変異の役割の研究にも有効な可能性があり、遺伝子研究の考え方を変えるものであると述べた。

(了)


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