2020/08/21

Market Overview

医薬品の安定供給面におけるアセアン地域の活用

1)はじめに
 日本では医療財政の健全化の施策としてジェネリック医薬品の使用促進や薬価引き下げ、診療報酬の改定等の医療費の抑制策が実施されてきたが、新型コロナの感染拡大により、一層の国民への医療サービスレベルの維持向上が求められる状況となっている。今後デジタルヘルスの活用による効率化・高度化がより速いスピードで進んでいくと思われるが、医薬品企業にとっては、医薬品を品質最優先の下で安定供給とコスト削減対応が重要な課題である。

2)議論中の対策
 米国では、米国で利用される最終製剤の半数強と、医薬品の原薬(活性成分)の70%以上が海外で製造される中、原薬の12%と19%をそれぞれ供給する中国とインドの品質管理について懸念されている。又、海外施設に依存する米国医薬品サプライチェーンの脆弱性が、COVID-19流行下で医薬品供給不足をもたらしているとも言われている。医薬品サプライチェーンをめぐっては、国内製造企業に税制面のインセンティブの付与や中国産医薬品への公的保険プログラムによる償還を段階的に減らすなどの内容を盛り込んだ法案が複数提出されている。
 日本では、 医療用医薬品 (現在、薬価収載は約1万7千品目)の医薬品原薬・中間体の約55%は輸入であり、中でも中国、インドからの輸入は大きな比重を占めている。本年3月にインド政府は原薬・製剤26種類の輸出(4⽉に解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンを除く24種類の制限を解除)制限もあり安定供給面確保策の検討がなされている。
 日本政府も、⽇本での⽣産拠点の確保を想定した「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助⾦」(2200億円)【*1】や、主に東南アジアでの拠点確保を想定した海外サプライチェーン多元化等⽀援事業」(235億円)【*2】を盛り込んだ⽀援策の公募を実施している。又、海外依存度の⾼い原薬などを⽇本で製造しようとする企業への⽀援策として、厚⽣労働省が製造所の⽣産設備費補助に30億円を計上した2020年度補正予算が4⽉30⽇、国会で成⽴している。
 更に、厚生労働省は今年3⽉に発⾜した「医療⽤医薬品の安定確保策に関する関係者会議」へ⽇本医学会傘下の58学会から提案があった数百品目の中から安定確保が必要な医薬品を選択し、その対策を本年中に纏める予定である。

3)アセアン地域の活用
 パンデミックは世界的規模の事象であり、グローバルな体制構築による対応が重要である。短期的には原薬在庫・製品在庫の増加、原薬ソースの複数化、原薬の製造等があるが、長期、且つグローバル視点での対応では、先進国は自国内の対応と同時に発展途上国の対応支援という役割が期待されている。
 発展途上の国々の医療分野においては、医療保険制度や医療従事者の数的確保も含めたインフラ整備構築と医薬品産業育成が課題である。又、一国の医薬品産業の発展ステップとして、①製品(完成品)輸入➡②原薬輸入・技術導入による現地製造➡③原薬製造からの現地製造➡④現地製造品の輸出が考えられるが、例えば、ベトナムは近年②の段階で品質向上への製造設備投資が活発である。また、インドネシアは③の段階で国営キミアファルマが原薬製造PJを進めている状況にある。その骨子となるのが人材であり、日本の人材育成支援がより求められている状況にある。
 従って、日本の自然災害からのリスク回避策も含め医薬品の安定供給策として、アセアン地域での原薬製造や製剤製造も一つの選択肢であると思われる。又、製造品の日本・進出国・周辺諸国への輸出による自社(又は現地企業とのJV等)の海外展開実現、日本の優秀な技術者(定年後の雇用面も含め)による技術移転等は、進出国の課題(原薬確保、産業発展、技術者育成、貿易収支改善等)解決の一助となる対応となり、Sustainability経営という点からも重要と思われる。 
 展開方法としては、自社単独、現地企業とのJV(M&Aも含め)や既にアセアンで展開している日系企業【*3】への委託製造等、種々の方法やステップが選択肢として考えられる。
 

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