2019/11/12

米国eHealthジャーナル 第7号

GenentechとRoche、糖尿病性網膜症の進行を予測する深層学習モデルを開発

糖尿病性網膜症, AI技術, 研究・調査, ジャーナル第07号, Roche, 患者データ・疾病リスク分析

 
 

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を採用

Genentechおよび親会社Rocheの共同研究班は、糖尿病性網膜症の進行が早い患者群を予測する業界初の「深層学習モデル」を開発し、Nature Digital  Medicine誌に9月20日付けで発表した。患者の病状進行の見通しを眼科医が把握することは、個々の患者に必要なケアを提供する助けになると考えられる。

米国の糖尿病性網膜症の患者数は約770万人で、2050年までに1,460万人に増加すると予測されている。現在はカラー眼底写真撮影が糖尿病性網膜症の診断に使われているが、研究班によると、この診断方法は正確性に欠け、大部分の患者が症状が進行し手遅れになるまで未診断のままとなっている。

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、成人における主要な失明原因となっている。

研究班は、カラー眼底写真データをRocheが開発したアルゴリズムを用いて解析し、糖尿病性網膜症の進行を予測した。アルゴリズムには、深層学習の一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が利用された。

結果、アルゴリズムによって、ベースラインから6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月後の、糖尿病性網膜症重篤度スケール(DRSS)における2段階あるいはそれ以上の悪化を、高い感度と特異度で予測することができた。

6ヶ月後の予測精度は12ヶ月後、24ヶ月後の場合に比べ低かったが、これについて研究班は、6ヶ月で病状が進行する患者数が比較的少なかったためと考察した。また、糖尿病性網膜症の診断において必須と考えられていなかった周辺部網膜と網膜内細小血管の異常が、予測シグナルとして重要であることが分かった。

研究班によれば、放射線科、皮膚科、病理評価といった分野でCNNアルゴリズムの利用はすでに広がっている。眼科では、糖尿病性網膜症の重篤度評価の自動化や、カラー眼底写真のCNN解析による心血管リスクの予測といった分野で開発が進んでいる。

今回の研究は、大規模データと人工知能(AI)技術の力を組み合わせ、眼症状の予防や視力の保護を目指すGenentechとRocheの眼科個別化ヘルスケア・イニシアチブの一環として実施された。

Genentechは、加齢黄斑変性症と糖尿病性網膜症を適応症とするLucentisを販売するが、今年5月には、Regeneron Pharmaceuticalsの加齢黄斑変性症治療薬Eyleaが糖尿病性網膜症についてもFDAから承認を獲得した。

 

(了)


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