2019/11/12

米国eHealthジャーナル 第7号

Amazon、バーチャル・プライマリーケアのAmazon Careを開始

テレヘルス, 音声技術, Amazon, ジャーナル第07号

 

 

シアトルの従業員向けパイロット・プログラム 

CNBCは9月24日、
Amazonがシアトル在住の同社従業員向けパイロット・プログラムとしてバーチャル・プライマリーケア・プラットフォームの「Amazon Care」を立ち上げたと報じた。

Amazonはこの取り組みを公式に外部に発表していないが、Amazon Careのウェブサイト(https://amazon.care/)は公開されており、誰でも閲覧が可能だ。

ウェブサイトによると、Amazon Careは、バーチャル・ケアと対面ケア(in-person)を組み合わせた最良のケアを、シアトル在住の同社従業員とその家族に提供するパイロット・プログラムで、Amazonは今後、シアトル以外の地域においてもAmazon Careを展開する計画を明らかにしている。

Amazon Careでは、テレヘルス、ナースとのオンラインチャット、医薬品メールオーダー(医薬品通販)サービス、往診依頼アプリなどを提供している。Amazon Careの開始にあたってAmazonは、医師を雇用するのではなく、シアトルのクリニック、Oasis Medical Groupと提携した。

 

 (出典)Amazon Care

 

Amazonの今回の動きは、2018年初旬に従業員向けクリニックネットワーク「AC Wellness」を立ち上げたAppleの動きに続くものだ。Amazonが従業員向けクリニックの展開を検討しているという噂は何年も前からささやかれており、Amazonのそういった動きが何を意味するかについて、様々な見解、憶測が飛び交ってきた。

Amazon Careが現実となった今、注目されるのは、Amazonが今後サービスの提供対象を同社従業員のみならず、一般消費者に拡大するか否かである。

米IT大手のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)によるヘルスケア市場参入は、常に大きな話題を提供している。

Amazonに関しては2018年1月、金融大手のJPMorgan Chase、および投資会社大手のBerkshire Hathawayと共同で、3社の従業員およびその家族向けに健康保険を提供する新企業を共同で設立すると発表、米国ヘルスケアシステムにおける制約と「営利追求型インセンティブ」から脱却し、妥当なコストでより良いヘルスケアを提供する計画を明らかにした。


2019年3月には、3社によるジョイントベンチャーの名称がHavenであることが発表され、同時期に立ち上げられたHavenのウェブサイト(https://havenhealthcare.com/)においてフォーカスする分野などの情報が公開されたが、未だ本格的な始動には至っていない。

Amazonは2018年6月にはオンライン薬局のPillPackを買収することで両社が合意したと発表し、処方箋医薬品薬局事業への参入を表明している。

さらにAmazonは2019年4月、同社の人工知能(AI)搭載音声アシスタント「Alexa」のスキルに、医療情報のプライバシーを保護する包括的な連邦法、HIPAA (Health Information Portability and Accountability Act)に準拠した医療サービスが加わると発表した。

コンプライアンス上の懸念とHIPAAが大きな障壁となっていたために、これまで医療分野では音声アシスタントは幅広い普及に至っていなかったが、AlexaのHIPAA準拠により、ヘルスケアに照準を定めるAmazonが、また大きく歩を進めた。

Amazonから招待を受けた6組織が現在、HIPAA準拠のスキルを提供している。

薬剤給付管理会社(PBM) のExpress Scriptsによる処方箋医薬品メールオーダー管理スキルの「Express Scripts」
●民間医療保険大手のCignaによるメンバーのための健康増進スキルの「Cigna Health     Today」
●Boston Children’s Hospitalによる子どもの術後回復スキルの「My Children's             Enhanced Recovery After Surgery(ERAS)」
●病院ネットワークであるProvidence St. Joseph HealthとAtrium Healthのそれぞれ       が提供する急病診療所(ER)案内/予約スキルの「Swedish Health Connect」と「Atrium Health」、
●慢性疾患モニタリングを行うデジタルヘルス企業のLivongoが提供する、糖尿病患者     向けの血糖値監視スキル「Livongo Blood Sugar Lookup」

の6種類だ。
 

(了)


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