2019/10/22

米国eHealthジャーナル 第6号

Insilico、シリーズB投資ラウンドで3,700万ドルを調達

創薬, 研究・調査, ジャーナル第06号, AI技術, VC投資・M&A・決算

 
 

医薬品創製におけるAI有用性を実証 

次世代AI創薬に特化する香港拠点の
Insilico Medicine(以下、Insilico)は9月10日、シリーズB投資ラウンドにおいて3,700万ドルを調達したことを明らかにした。今回の投資ラウンドはQiming Venture Partnersが主導し、Eight Roads、F-Prime Capital、Lilly Asia Ventures、Sinovation Ventures、Baidu Ventures、Pavilion Capital、BOLD Capital Partnersらが加わった。

Insilicoは9月2日に、同社が「GENTRL」と呼ぶ独自の医薬品発見AIシステムの利用により、医薬品発見プロセスの劇的な短縮に成功したと発表したばかり。この研究結果は、Nature Biotechnologyに同日付で掲載された。Insilicoによると、医薬品発見におけるAI技術利用の有用性が実証されたのは、今回がはじめてである。

GENTRLは、敵対的生成ネットワーク(GAN)、強化学習と変分推論、テンソル分解といった最新のAI技術を組み合わせた機械学習アルゴリズムだ。Insilicoは、中国の上海拠点を拠点とするバイオ製薬企業WuXi AppTecと共同でGENTRLを開発した。Insilicoでは、今回調達した資金をGENTRLの商業化に利用する考えだ。

数千種類の低分子を検証し、その中からほんの数種類のリード化合物を発見する医薬品創製プロセスには、通常10~20年という長期間と5億~26億ドルの資金を要する。

研究では、WuXi AppTecが標的として選択したディスコイディン・ドメイン受容体(discoidin domain receptor、以下DDR)1について、これを強力に阻害する新規化合物をGENTRLを使って発見することを試みた。DDR1は、上皮細胞に発現する炎症誘発性の受容体チロシンキナーゼで、線維症への関与が示唆されているが、DDR1が線維症のプロセスを直接制御しているのか、それとも早期の炎症イベントに関与しているのかは不明である。

Insilicoは、既知のDDR1キナーゼ阻害剤とその3次元構造、一般的なキナーゼ阻害剤、非キナーゼ標的分子といった6種類のデータセットを使ってモデルを構築し、GENTRLを訓練した。
その後、GENTRLは、標的選択から23日後までに6つのリード化合物候補を選択。35日目までに、これらの分子を成功裏に合成し、WuXi AppTecにおいて生物学的解析を実施した。インビトロ阻害活性を調べた結果、2つの化合物で強力なDDR1阻害活性が示された。また、6つのうち4つはDDR1のみを選択的に阻害していた。

GENTRLのソースコードはオープンソース化されており、InsilicoはGENTRLの活用により新たな医薬品の開発が進むことを期待する。

 

(了)


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