2019/10/22

米国eHealthジャーナル 第6号

Google、補聴器メーカーのGN HearingおよびCochlearと提携

Google, Cochlear, 耳鼻咽喉科, 音声技術, 医療機器, ジャーナル第06号

 
 

音楽や通話音を補聴器に直接ストリーミング

デンマーク拠点の補聴器メーカー
GN Hearingとオーストラリア拠点の補聴器メーカーCochlearは9月3日、Bluetooth Low Energy(BLE)を利用して、音楽や通話音をアンドロイド・スマートフォンから補聴器にワイヤレスで届ける目的でGoogleと提携したことを明らかにした。BLEとは、近距離無線通信規格Bluetooth 4.0以降で採用されている省電力性能を重視した仕様の1つで、ボタン電池1つで長時間駆動が可能な超低消費電力を実現している。

Googleは同日、すべてのPixelスマートフォン向けに「Android 10」を正式にリリースした。同OSで走るPixel 3、Pixel 3 XL、Pixel 3a XLは、GN Hearing製の補聴器である「ReSound LiNX Quattro」と「Beltone Amaze」、そしてCochlearの補聴器である「Nucleus 7 Sound Processor(以下、Nucleus 7)」にBLEを利用して音声ストリーミングを提供する最初のアンドロイド・スマートフォンとなる。なお、新規ストリーミング技術の仕様はオープンソースとなっており、他の補聴器メーカーやアンドロイドデバイス・メーカーが、BLEによる補聴器へのストリーミングを提供することを可能にしている。

世界保健機関(WHO)によると、世界では約4億6,600万人もが聴力の問題を抱えており、その患者人口は毎年何百万人も増えている。国立衛生研究所(NIH)の調べでは、米国だけでも、成人の約15%にあたる3,750万名が聴力に何らかの問題を抱えており、約2,800万名が補聴器の恩恵を受けると見積もられている。聴力の問題は特に高齢者において一般的で、65~74歳では3人に1人、75歳以上ではその半数弱が難聴であり、世界で高齢化が進む中、患者人口も増加の一途をたどると考えられる。WHOによると、難聴人口は2055年までに9億人に到達する見通しだ。

技術大手は、難聴ソリューション市場に注目している。Appleは2017年7月、googleに先駆けてCochlearと提携し、iPhone、iPad、iPod touchから直接CochlearのNucleus 7に音声ストリーミングを提供することを可能にした。iOSアプリで音声やその他の機能を制御できるインプラントや補聴器は他社からも出ていたが、Nucleus 7はiPhoneそのもので制御が可能で、専用アプリのダウンロードが不要となった最初の例だ。

Appleは2019年6月、2019年6月、カリフォルニア州サンノゼで開催された「2019 Apple WorldWide Developers Conference(WWDC)」において、耳の健康を守るノイズ対策用のApple Watchアプリ、「Hearing Health」を発表したばかりだ。Hearing Healthは、スポーツイベントやコンサート、工事現場など、周囲の音の大きさが気になる場所へ行くと、Apple Watch内蔵のマイクが周囲の音を拾って、90デシベルを超えた時点でユーザーに通知するもの。


Googleは2019年2月に、難聴患者を支援する2種類のスマートフォンアプリ、「Sound Amplifier」と「Live Transcribe」を発表した。ヘッドフォンを使うSound Amplifierは、アンドロイド・デバイスを介して、周辺の騒音レベルを下げるとともに、音声を増幅・拡張することで、ユーザーにとって音を聞こえやすくするもの。騒音レベルの調節や、音声の増幅・拡張レベルはユーザー自身でカスタマイズが可能だ。

音声文字変換アプリのLive Transcribeは、リアルワールドにおける対話の音声を文字へとリアルタイム変換するもの。リアルタイム変換された会話のテキストは端末の画面上に表示されるため、瞬時に会話を「読む」ことができるようになっている。Live Transcribeは現在、70種類の言語/方言に対応している。

 

 

リアルタイム対話を可能にするLive Transcribe


Googleは5月、アクセシビリティについて考えるGlobal Accessibility Awareness Day (GAAD)において、Live Transcribeの新機能を明らかにした。Live Transcribeはそれまで、は、人間の話し言葉だけをリアルタイムに文字変換していたが、今回のアップデートにより、聴覚障碍者にとって情報を得ることが難しいと考えられてきた拍手の音や会話での笑い声、犬の鳴き声やドアのノック音など、人の声以外の音についても表示されるようになる。

 

(了)


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