2019/10/22

米国eHealthジャーナル 第6号

Apple、Apple Watchを利用した大規模長期研究を実施

ジャーナル第06号, 研究・調査, ウェアラブル, Apple, 患者データ・疾病リスク分析

 
 

NIH、Harvard University、University of Michiganらと提携

Appleは9月10日、国立衛生研究所(NIH)および複数の大学や組織との提携を通じて、「Apple Watch」のヘルスケア関連アプリを活用した3件の大規模な長期研究を実施することを明らかにした。

Appleは2019年6月にカリフォルニア州サンノゼで開催された「2019 Apple WorldWide Developers Conference(以下、WWDC)」において、Apple Watch向けの最新OSである「watchOS 6」および、月経周期を記録する「Cycle Tracking」や耳の健康を守るノイズ対策用の「Hearing Health」といった新規のApple Watchアプリの導入を発表、同ウェアラブルにおけるヘルスケア関連機能の拡大を明らかにした。

NIHの傘下組織であるNational Institute of Environmental Health Sciences (NIEHS)とHarvard University の公衆衛生大学院であるT.H. Chan School of Public Healthとは、女性の健康に関する長期研究で提携契約を締結した。

本研究は、被験者の月経サイクルと婦人科関連症状を追跡し、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、不妊、骨粗鬆症、妊娠、閉経への移行を含むさまざまの症状や状態に関するリスク評価を行うもので、Apple WatchのCycle Trackingアプリを活用する。

Cycle Trackingのデータは、iPhoneや Apple Watchのほか、ユーザーが普段使っているほかのアプリに由来するヘルスケアデータを1カ所に集約するiPhoneの「Health app」に組み込まれる。

 

(出典)Apple


University of Michiganとは、周囲の騒音が耳の健康に与える影響の長期研究で提携した。本研究では、耳の健康を守るノイズ対策用のHearing Healthアプリを活用する。

Hearing Healthは、スポーツイベントやコンサート、工事現場など、周囲の音の大きさが気になる場所へ行くと、Apple Watch内蔵のマイクが周囲の音を拾って、90デシベルを超えた時点でユーザーに通知するもの。世界保健機関(WHO)によると、90デシベルを超える音を週に4時間以上聞くと、聴覚に悪影響が及ぶ恐れがある。

Appleによると、毎日の騒音への暴露が耳の健康に及ぼす長期的影響を検証する初の試験となる。試験データはWHOと共有される。

3つ目の研究は、様々な日々の活動・運動と心臓の健康の相関関係を調査するもので、Brigham and Women’s HospitalとAmerican Heart Association(AHA)との提携を通じて実施される。

本研究では、心拍および階段の利用や歩くスピードといった日々の「活動シグナル」が、入院や転倒、心臓の健康、および生活の質にどのように影響するかに焦点を当てる。

健康的な生活を促し、心血管系の健康増進を達成することが目標だ。Appleは6月のWWDCにおいて、日々のアクティビティをトラッキングするApple Watchアプリ、「Activity」の新たな機能として、ユーザーが自身のアクティビティの傾向をより長いスパンで把握するのを可能にする「Trend」が加わることを発表していた。

Apple WatchとiPhoneのユーザーは、これらの試験に参加することが可能だ。Appleによると、希望者は、今年末までに無料ダウンロードが可能になる研究用の「Research app」を使って試験に参加できる。これらの研究ではアプリを使用することで、通常の臨床試験被験者よりもはるかに多様なサンプルを大量に収集することが可能となる。

 

(了)


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